▲▲ ▼▼

77.病気を起こすウイルスは何種類あるのですか?.  1-4-98.

パート−1.むずかしい質問.

 冬になると例年でもかぜが流行ります。今冬はそのうえに香港での新型インフルエンザウイルスの感染したヒトが死亡したとのニュースが社会をにぎやかにしていることもあって、ウイルスによる病気についての質問が多くなりました。例えば、病気を起こすウイルスは何種類あるのですか、カゼとインフルエンザはどのように違うのか、インフルエンザでどうしてヒトが死ぬのか、インフルエンザに罹っているお年寄りが細菌の混合感染を受けると肺炎を起こして死亡する危険があるといわれる理由はどうしてですかなどです。それらの中から病気を起こすウイルスは何種類あるのですかという質問を取り上げます。表現と内容の一部に難しいことがありましょうが、それは記号とでも思って読み続けて下さい。

 ウイルスが引き起こす病気の種類も正確には把握しにくい問題です。更にその上、ヒトに病気を起こすとされているウイルスの数も正確にはお答え出来ません。私達も不思議に考えているのですが、ウイルスは感染する人の状況、例えば抵抗力が弱っているヒト、年齢や病気を持っているヒト等、によって病状が変わることがあります。更に、ある特定のウイルスも何種類もの違う病気の原因にもなります。

 ウイルスの特徴などの解説は別な機会に纏めることを計画中ですから、ウイルスの説明は抜きにして、一般にお医者さんは、どのような病気のときにどのようなウイルスを原因と考えるのかを簡単に纏めてみました。

 ここで判って貰いたいことは、お医者さんが診察したときに症状から何種類もの違うウイルスを原因と考えていることです。逆の表現をすると、ある一つのウイルスでも幾つか違う病気を起こすということです。例えは、子供の病気に水疱瘡(みずぼうそう、専門的には水痘と呼ぶ)があり、成人には帯状疱疹という病気があります。この二つはお医者さんから観ると全く違う病気ですが、原因は一つの同じウイルスによります。ある特定のウイルスが性質の違う病気を起こすことが出来るのかは、ウイルス学ではウイルスの病原性virulenceとか起病力pathogenicityと呼びますが、そのほとんどがまだ判っていません。

パート−2.実習微生物学というタイトルの教科書.

 医療衛生学部ので「微生物学」の授業では「実習微生物学」という教科書を使用しています。この「実習微生物学」のウイルス学の項目で取り上げているウイルスは、私が勝手に考えた分類に従って記載してあります。その勝手な分類による疾患別に主な原因ウイルスを列挙します。

 代表的な疾患と主な原因ウイルスを記載する前に、この「実習微生物学」という名前の由来について、少し説明させて下さい。

 日本に最初に出来た伝染病研究所は、ドイツから帰国しても細菌の研究をする場所の無かった北里柴三郎先生の為に慶応義塾の創設者・福沢諭吉先生が個人の経済的援助で明治25年に創設されたのです。その伝染病研究所の所長であった北里柴三郎先生の優秀な弟子の一人に浅川範彦という若くして亡くなった秀才がいました。北里所長がこの浅川助手に書かせた本に「実習細菌学」があります。これは、日本人による日本語の日本で最初の細菌学の教科書であります。

 日本で最初の「実習細菌学」の原本は、白金の図書館に保存されています。私達は、日本最初の教科書にならって、自分達が使う教科書に「実習微生物学」という名前を付けました。表の表紙には「破傷風菌」、裏の表紙には「コレラ菌」の電子顕微鏡写真をのせました。表は「北里柴三郎」を、裏は「ローベルト・コッホ」をシメージしています。

パート−3.代表的な疾患と主な原因ウイルス.

 病気を下に記載した12群の臓器別に分けて、それに該当すると考えられる原因ウイルスを記載しました。

  1.呼吸器系疾患、

  2.耳系疾患、

  3.眼系疾患、

  4.発疹性・皮膚系疾患、

  5.泌尿器・生殖器系疾患、

  6.消化器腸管系疾患、

  7.肝臓疾患、

  8.膵臓疾患、

  9.神経系疾患、  

 10.腫瘍、

 11.心臓疾患、

 12.出血熱疾患、

 13.その他.

★1.呼吸器系疾患で考えられる原因ウイルス.

  各々の疾患に、一般的に原因と推測されるウイルスがあり、ウイルスの名前は同じでも、型が違うと違ったウイルスと思って下さい。

  ここでいう呼吸器系疾患には、鼻炎、上気道感染、下気道感染、肺炎、口内炎などであります。

  列挙すると、インフルエンザウイルスA・B型、パラインフルエンザウイルス3型、RSウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、レオウイルス、コクサッキーウイルスA群5・10・16型、コクサッキーウイルスB群4・5型、単純ヘルペスウイルス、エコーウイルス6・9・11型、コロナウイルス、サイトメガロウイルス、麻疹ウイルス、エンテロウイルス71型などで、以上21種類のウイルスが該当します。

  1. 鼻炎: ライノウイルス

  2. 上気道炎: アデノウイルス、RSウイルス、インフルエンザウイルスA・B型、パラインフルエンザウイルス3型、コクサッキーウイルスA群16型、単純ヘルペスウイルス、

  3. 下気道炎: インフルエンザウイルスA・B型、パラインフルエンザウイルス3型、アデノウイルス、RSウイルス、エコーウイルス9・11型、コクサッキーウイルスB群5型、

  4. 肺炎: インフルエンザウイルスA・B型、パラインフルエンザウイルス3型、アデノウイルス、RSウイルス、コクサッキーウイルスA群9型、サイトメガロウイルス、麻疹ウイルス、

  5. 口内炎・ヘルパンギーナ: 単純ヘルペスウイルス、コクサッキーウイルスA群5・16型、コクサッキーウイルスA群10型・B群4型、エコーウイルス6・9型、

★2.耳系疾患で考えられる原因ウイルス.

  ここでいう耳系疾患には、耳下腺炎、顎下腺炎や中耳炎などであります。

  列挙すると、ムンプスウイルス、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、エンテロウイルス71型などでのウイルスが該当します。

★3.眼系疾患で考えられる原因ウイルス.

  ここでいう眼系疾患には、結膜炎、角膜炎や眼内炎などであります。    

  列挙すると、アデノウイルス、エンテロウイルス70型、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、水痘・帯状ヘルペスウイルス、EBウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルスなどの8種類のウイルスが該当します。

★4.発疹性・皮膚系疾患で考えられる原因ウイルス.

  ここでいう発疹性・皮膚系疾患には、水疱性発疹、紅斑性発疹、丘疹性発疹、手足口病やヘルパンギーナーなどてあります。

  列挙すると、痘瘡ウイルス、水痘・帯状ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、EBウイルス、コクサッキーウイルスA群9・16型、コクセ、サッキーウイルスB群4型、エコーウイルス4・6・9・11型、エンテロウイルス71型、アデノウイルス、ヒトパルボウイルスB19などの17種類のウイルスが該当します。

  1. 水疱性発疹: コクサッキーウイルスA群9・16型、エコーウイルス11型、エンテロウイルス71型、単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状ヘルペスウイルス、

  2. 紅斑性・丘疹性発疹: コクサッキーウイルスA群9型、エコーウイルス4・9型、アデノウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型、ヒトパルボウイルスB19、

  3. 手足口病: コクサッキーウイルスA群16型、エンテロウイルス71型、

  4. ヘルパンギーナー: コクサッキーウイルスA群10型・B群4型、エコーウイルス6・9型、

★5.泌尿器・生殖器系疾患で考えられる原因ウイルス.

  ここでいう泌尿器・生殖器系疾患には、流産、先天性疾患、膀胱炎、睾丸炎、卵巣炎、陰部疾患や性行為感染症などてあります。

  列挙すると、ヒトパルボウイルスB19、風疹ウイルス、腎症候性出血熱ウイルス(ハンターンウイルス)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトT細胞白血病ウイルス、(HTLV)、サイトメガロウイルス、水痘・帯状ヘルペスウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、ムンプスウイルス、BKウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスなどの14種類のウイルスが該当します。

  1. 流産、先天性疾患: ヒトパルボウイルスB19、風疹ウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状ヘルペスウイルス、

  2. 出血性膀胱炎、睾丸炎、卵巣炎: アデノウイルス、ムンプスウイルス、サイトメガロウイルス、BKウイルス、

  3. 性行為感染症: ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、(HTLV)、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、

  4. 陰部疾患: 単純ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、

★6.消化器腸管系疾患で考えられる原因ウイルス.

  ここでいう消化器腸管系疾患には、胃腸炎や下痢症などてあります。

  列挙すると、ロタウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルス68型−71型、ポリオウイルス、単純ヘルペスウイルス、小型球形ウイルス(RSRV)、ノーウォークウイルス、カリシウイルス、アストロウイルスなどの13種類のウイルスが該当います。

★7.肝臓疾患で考えられる原因ウイルス.

  ここでいう肝臓疾患には、肝炎、肝硬変や肝ガンなどてあります。

  列挙すると、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなどの7種類のウイルスが該当します。

★8.膵臓疾患で考えられる原因ウイルス.

  ここでいう膵臓疾患には、膵炎てあります。

  列挙すると、ムンプスウイルス、コクサッキーウイルスB群4−5型の3種類のウイルスが該当します。

★9.神経系疾患で考えられる原因ウイルス.

   ここでいう神経系疾患には、脳炎、脳症、無菌性髄膜炎やポリオ様麻痺などてあります。

   列挙すると、ポリオウイルス、日本脳炎ウイルス、狂犬病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、Bウイルス、JCウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ムンプスウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、水痘・帯状ヘルペスウイルス、コクサッキーウイルスA群7・16型、エコーウイルス6・11型、エンテロウイルス71型などの19種類のウイルスが該当します。

  1. 脳炎・脳症: 日本脳炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ムンプスウイルス、インフルエンザウイルス、Bウイルス、JCウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、狂犬病ウイルス、

  2. 無菌性髄膜炎: ムンプスウイルス、水痘・帯状ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エコーウイルス11型、コクサッキーウイルスA群16型、エンテロウイルス71型、

  3. 麻痺: ポリオウイルス、エコーウイルス6型、コクサッキーウイルスA群7型、麻疹ウイルス、

★10.腫瘍で考えられる原因ウイルス.

   ここでいう腫瘍には、白血病や子宮ガンなどてあります。

   列挙すると、ヒトT細胞白血病とパピローマウイルスの2種類が該当します。

★11.心臓疾患で考えられる原因ウイルス.

   ここでいう心疾患には、心筋炎や心膜炎てあります。

   列挙すると、コクサッキーウイルスB群1−5型、エコーウイルス6・9型、
   インフルエンザウイルスA・B型、アデノウイルスの10種類のウイルスが該当します。

★12.出血熱疾患で考えられる原因ウイルス.

   列挙すると、コロナウイルス、ラッサ熱ウイルス、マールブルグウイルス、エボラ出血熱ウイルス、ハンターンウイルス(腎症候性出血熱ウイルス)、黄熱ウイルス、デングウイルスなどのウイルスが該当します。

★13.その他.

   甲状腺炎、突発性難聴、顔面麻痺、多発性硬化症、ある種の抗原病、イボ、ボケ、その他多くの病気で、原因としてウイルスが考えられます。

   質問に対する適切な回答にはなりませんでしたが、多くの病気がウイルスによって起こされることを判って貰えればと願っています。ウイルスの性質や特徴などを含めた解説集の企画を検討しています。また「ウイルスの検査入門」についても原稿を纏める予定表にリストされています。今しばらくお待ち下さい。

▲▲ ▼▼


Copyright (C) 2011-2024 by Rikazukikodomonohiroba All Rights Reserved.