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95.トイレに付けた飾り布. 6-15-98.

その1.重金属は毒である.

 鏡がどうして人の顔などをうつせるのかがとても不思議に思い、鏡を壊してみたり、鏡の裏側を削って見たりして、親に叱られた経験が子供の頃にありました。鏡の裏側には、特別な仕掛けは発見できませんが、ただガラス板に赤い物が張り付けてあるだけでした。そのとき鏡の裏側に付いている物は毒で、舐めると声が出なくなるとも親に言われたが、なにが裏側に付いているのかは教えて貰えなかったことを思い出します。鏡の裏側を本当に舐めた人がいたのかどうかは知りませんが、大量に舐めれば水銀で声が出なくなっても不思議はないのでしょう。

 女性が用いる化粧品の「オシロイ」は「白粉」と漢字で書きます。昔の白粉は、鉛が大量に含まれていたので、職業上毎日白粉を顔に塗っていた女性には、鉛金属による健康被害があったようです。

 いま話題になっている環境ホルモンの疑いのある物質群にも金属が入っています。ある種の金属は、タンパク質と結合することが現在は解っています。しかし、昔は誰もそのような事柄を知りませんでしたから、日用品にも使われていたのでしょう。全ての金属ではありませんが、ある特定の金属は人間の身体を作っているタンパク質とも結合しますから、生体には毒なのです。

その2.学生が実験から学ぶこと.

 微生物学の学生実習の期間中に祭日などの休みの日が無く、学生全体の理解力が良く、更に積極性があるときには、自分達で計画して行う自由実習の期間を設けることがあります。

 自分達の暮らしに関係する物品を持ち込んできて、それらの物にどの程度の微生物が存在するのかを調べたり、また逆にどの程度の殺菌力があるのかを調べたり、思い思いの自由な実習を自ら行います。その結果は、学生達の期待通りであったり、または全く期待値と異なる結果が出ることもあります。

 お金は、不特定多数の人達、ときには汚い手でも扱うことがありますから、細菌学的には汚いと学生達は直感的に考えます。そこで、どの程度の微生物が付着しているのかを調べることが良くあります。また殺菌効果を宣伝している薬用石鹸の殺菌力を調べることもあります。

 この2種類の試験は、学生達の期待値とは異なる結果がでることが多いのです。使い古しの紙幣には多く菌が付着している様子が分かりますが、硬貨は菌が見つからず無菌のように思える結果が出ます。また薬用石鹸は、調べ方にもよりますが、学生が自分達の技術で調べる限り、あまり殺菌効果は観察されないことが多いのです。

 実験者達は、薬用石鹸の殺菌力の低い事、と硬貨には菌が検出されない事には、非常な驚きと不思議さを実感します。栄養分を含む寒天上に10円玉を置いて一晩培養します。「10円玉に細菌が付着していれば、10円玉の周りに細菌が殖えてくる筈だ」が期待値であります。ところが、10円玉の周りにはほとんど菌が殖えていないのが解ります。そこで次に、栄養分を含む寒天上に充分量の細菌を植え付け、そこに10円玉を置いて一晩培養します。菌を充分に塗った寒天上は細菌のベットが出来ていますが、10円玉の周りだけには菌が増殖してなく、寒天がむき出しになっていることが観察されます。10円玉は、細菌の増殖を抑えたのです。

 10円玉は、銅を含む銅貨です。10円銅貨の銅が僅かにしても水に溶け出し、微量で殺菌力を示したのです。10円玉は、無菌なのでなく殺菌力があるため、一見無菌状態に見えたのでした。このように、金属には大なり小なり殺菌力があるため、不特定多数の人が毎日使うドアの取っ手等は金属製のものが多く使われています。取っ手が金属製である理由が、ここに存在します。 

その3.トイレにつけた飾り布.

 ところが、来客の使用も考慮して、トイレのドアの取っ手にレース等が付いているキレイナ袋状の飾り布を取っ手に付けている家庭がときに見られます。この飾り物は、衛生学的には極めて非衛生的であります。取っ手の飾り物には、抗菌処理を施してあるものも売られているそうです。その飾り布の抗菌効果は、取っ手の金属が本来持っている抗菌力よりも弱いかも知れません。飾り布を購入して衛生的で清潔な雰囲気を醸し出そうとの考えは、全く逆効果で非清潔・非衛生的な環境を作り出してしまいます。

 どうしても金属の取っ手は嫌で、清潔感を出したいと希望するのであれば、ドアの取っ手に多少彩色を施すなどの工夫をした「アルミホイル」を毎日付け替えた方が良いかも知れません。

 昔流の物や仕方には、迷信的で意味のないこともありましょうが、全てが無意味でも無いようです。取っ手の飾り布の使用は、止めた方が良いと思います。

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