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98.水素でパンを作りましょう. 6-22-98.

その1.パンはどうしてフクラムか.

 全世界で俗にいうパンが何種類あるのかは知りませんが、ふくらんで柔らかいパンと煎餅のように硬いパンがあります。柔らかいパンは、どうしてふくらむのでしょうか。

 パン、ケーキやクッキー等を作った経験のある方は判っていると思いますが、小麦粉にイースト、膨らまし粉または重曹等を加えて焼き上げると、ふくらんだ美味しいパンができあがります。加熱して砂糖を溶かし、キツネ色になったとき重曹を加えて短時間かき混ぜていると、だんだんと砂糖液はアワだって来る。その時かき混ぜることを止めると、ふくらんだ砂糖菓子ができあがります。この砂糖菓子を作るには、イーストは使えません。

 パンを作るときにイーストや重曹を加えるには、何か特別な理由があるのでしょうか。イーストを加えて小麦粉を練った後、一晩とか適当な時間「寝かせる」ことをします。即席的にパンを作るときは、重曹を使い「寝かせる」ことはしません。「寝かせる」という事は、イーストを増殖させる事を意味します。

 イーストがデンプンやブドウ糖を分解すると、酢酸や乳酸等のような有機酸と二酸化炭素ができます。この二酸化炭素が練った小麦粉の中にできて、それが加熱されて膨張するので、フックラとしたパンができるようです。重曹は、加熱されると二酸化炭素になります。

 いずれにしても、二酸化炭素で小麦粉を膨らませたのがパンのようです。私達の研究室では、シロアリから取りだした水素を作る細菌の研究をしています。これらの水素を作る細菌にデンプンを喰わせると、大量に水素ガスを発生します。デンプンから水素を出す事を利用すると、水素パンができます。 

その2.パンの定義

 パンを製造販売している会社の研究所の所長さんが、ある時私達の研究室に来られた機会に、水素パンの話をしたことがあります。

 私達がシロアリから分離した水素を作る細菌は、デンプンを喰って水素ガスと酪酸を作ります。小麦粉に水素を作る菌を混ぜて置くと、水素ガスが発生してパンのように膨らみ、チーズのような香りがします。水素で作ったパンに興味はがありませんかと、聞いてみました。

 答えは意外でした、「パンとはイーストで作った物を言う」とする定義があるので、イースト以外で作った物は「パン」とは呼べないと言うことでした。ドイツでは、ドイツ特有なビールの製法が決まっているので、ドイツ以外の国で製造された飲み物は「正式にはビールと呼ばない」そうです。古い歴史を持つパンとビールならではの話です。

その3.水素でパンを作りましょう

 パンと正式には呼べなくても、一見「パン」と間違うような物を水素生成菌を使って作ることができます。シロアリから分離した水素生成菌は、チーズを作る菌に似ていますので、焼き上げると「チーズ」に似た香りがします。チーズの良い香りがすることは確認してありますが、食べたらどんな味なのかはまだ誰も確認していません。

 「パンもどき」の安全性は、人が食べる前に動物実験で確認する必要があります。そのため、「水素パンもどき」の味を試した人は、まだ地球上には存在しません。いつになるかは定かではありませんが、「水素パンもどき」の人類史上初の試食者としての栄冠は、多分私の舌となりましょう。

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