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133.インフルエンザワクチンは無効か2-20-99.

インフルエンザの流行期に考えること.

 いま現在日本人はインフルエンザウイルスの猛威に曝されています。今年の流行が落ち着いた時点で、私はインフルエンザについて私自身が考える幾つかの事柄を紹介しようと思っていました。しかし、毎日のようにどこそこの施設でお年寄りが何人犠牲になったとマスコミが報じているのを見聞きし、更に一部のマスコミの少しヒステリック過ぎると思われる報道に接し、感想も含めて「私の言いたいこと」を少し書くことにします。

 後にも触れますが、「のどもと過ぎれば熱さを忘れる」の例え話のように、一部のマスコミは少し節操が足りないのではないかと不快に感じています。また一般人もインフルエンザとそのワクチンについて考え方を少し変えた方が得策と思います。ワクチンは百害あって一利なし」と言わんばかりのワクチン自体を否定する極論を展開する一部の人達の意見に耳を傾けすぎたきらいと、学童を中心にワクチンの集団接種が30年間も実施されてきたので、インフルエンザは子供の風邪と勘違いしている節も感じられます。

 昨年に続く流行ですから、一般の人のインフルエンザに対する関心は今は相当に高いと考えられます。そこで、インフルエンザおよびワクチンについての極めて主観的ではありますが、私個人の考える問題点について書いてみたいと思います。

 

インフルエンザワクチンの供給量の問題点.

 欧米と日本でのインフルエンザワクチンの供給量について、極めて大雑把な比較を図式的に説明します。皆さんは頭のなかで縦の棒線クラフを描いてください。縦線は人口1000人に対するワクチンの供給量を示します。供給量は、ほぼ接種量に相当すると考えてください。真中に中心線を書き、左側が欧米で右側が日本のワクチンの供給量とします。横線は左端から1980年以降より昨年までの一年毎の年度を示します。各年度のワクチンの供給量を黒い縦線で表示します。書き上げた棒線グラフは、どのような形になったと思われますか。結果は、左右対象になりました。

 右側の日本国内でのワクチンの供給量は、1980年から1987年までは人口1000人に対して300人に近い200人分代を推移しています。その後急激に下降しはじめ、1994年以降のワクチンの供給量は数人分(ワクチン接種率で0.3%程度)になっています。1987年まで高い水準を維持していた棒線は急激にゼロに近づく下降線を描いています。

 ところが、左側の欧米でのワクチンの供給量を示す棒線グラフは、どうなっているのでしょうか。簡単に表現すると、中心線を挟んで左側の欧米の棒線グラフは50人分代から毎年確実に上昇するカーブを描き200人分代に到達しています。右側の日本の状況を表す縦の棒線とは全く左右対象で、中心線を挟んで両端が低く中心に近づくにつれて高くなる図形を描いています。

 なんとも奇妙な左右対象の図形になりました。国のレベルではワクチン供給量、個人のレベルではワクチン接種率が右肩下がりを示す国は、世界広しと言えども日本以外に存在しないようです。

 

Bワクチンの接種年齢の問題点.

 欧米ではインフルエンザワクチンの接種は、積極的に実施されています。それに応じてワクチンの供給量も増えているのです。老人や抵抗力の低い人を中心にワクチンが積極的に接種されるのは、米国だけでもインフルエンザで数万人の老人が死亡し、毎年数十万人が入院している状態と直接関係があります。インフルエンザは怖い病気との認識が定着して来ています。

 日本では、1960年代から小中学校の学童を中心としてワクチンの集団接種が約30年間行われて来ました。学童を中心にワクチン接種が実施されたのは、ウイルスの増殖を増幅させる格好の場となっている小中学校でのインフルエンザの大爆発を抑制することにより、社会全体をインフルエンザの被害から守ろうとする考えからでした。個人のインフルエンザを予防するよりは、集団でのインフルエンザの大爆発的な広がりを防ぐことが目的でありました。

 学童に集団接種を実施してきたので、インフルエンザは単に子供のかぜと勘違いしている人も多くなり、更にワクチン自体を否定する極端な意見も多く聞かれるようになりました。そこで1994年になると政府は、インフルエンザの脅威が低減した訳ではありませんでしたが、学童への集団接種を中止と決めてしまいました。このワクチンの接種中止の決定に一部のマスコミは、大きく関与しました。いま現在のマスコミの報道とは全く逆で、ワクチン接種を実施することは悪のような報道も見受けられました。お年よりや体力の弱い人達へのワクチン接種の必要性を啓蒙もせずに、集団接種を中止してしまったので、ワクチンを接種する人が殆どいなくなってしまいました。現在のインフルエンザワクチンの接種率は、0.1%程度と言われています。

 

Cワクチン接種率の低下はなにをもたらすか. 

 日本では、毎年冬になるとインフルエンザによる学級閉鎖は話題になりますが、老人の被害状況はこれまで明らかにされていませんでした(これにはいろいろな要因があります)。大流行がない年でも実際には少なくとも数千人の死亡者と数万人の入院患者が発生していると考えられています。

 1957年に新アジア型ウイルスによるインフルエンザが流行した時、数万人規模のある集団(勤務者本人とその家族)でのインフルエンザの罹患率についての記録が残っているようです。それによると、第1波で約26%の人がインフルエンザに罹り、第2波でさらに30%にまで上昇し、最終的には56%の人達が感染したことが明らかにされています。家族を含めた半数以上の人がインフルエンザに罹ってしまったのです。電話交換手、公用車の運転手、部課長などを含む人達の半分が数日間寝込んでしまいました。

 インフルエンザの大流行が起きると、普通の数倍ものインフルエンザの患者が病院の外来に押し寄せます、肺炎患者の入院で病院のベットは満床になり、過労なども手伝って結果的には医師や看護婦などの医療従事者も高率にインフルエンザに患者から罹ってしまいます。その結果、病院の機能は大幅に低下します。老人ばかりでなく若い人達にも肺炎などの重症者が続発すると、航空管制、警察、消防、自衛隊、輸送機関、通信機関などの機能も大幅に低下する危険性が考えられる。阪神大地震のような災害とインフルエンザの大流行とが同じに起きたらどうなるのでしょう。

 それにもまして、インフルエンザは単なる風邪ではなく恐ろしい病気であり、例え治療して治ったとしても精神的、肉体的且つ経済的には大きな損失です。病気を治すより病気にならないことが大切です。

 

Dワクチンは無効か.

 ワクチンの接種を受けさせた方が良いと考えられる人の分類、基準やその接種の優先順位などは、国によって多少ことなります。残念ながら日本にはこれらの取り決めはまだありません。そこで米国のワクチン接種の優先順位を紹介します。

 米国では、人を5グループに分けています。最も優先順位の高い集団は、即ち最初にワクチンを接種させる人は、重要な政府関係者社会を維持するに必要な職業人医療関係者慢性疾患で抵抗力の弱い人、と65歳以上の老人全てであります。第二番目は1歳以下の乳児と妊婦、第三番目は抵抗力の弱い患者と家庭で接する人、第四番目は1歳から18歳までの幼児、生徒と学生、最後の第五番目は18歳以上65歳までの人となっています。(MM502).

 さて次に国産のインフルエンザワクチンがどの程度有効なのかを示す臨床試験の報告を紹介します。

小児におけるインフルエンザワクチンの効果
                        (JAMA 272:1122-1126,1994)
 接 種 者       7歳以下      7歳以上      合 計
ワクチン接種群 
 対象者の数       37        48        85
 感染者の数と割合    10(27.0%)      7(14.6%)     17(20.0%)
ワクチン非接種者 
 対象者の数       31        21        52
 感染者の数と割合    18(58.1%)     14(66.7%)     32(61.5%
ワクチンの有効率     53.6(P<0.01)  78.1(P<0.01)  67.5(<0.01)

 85名の喘息の小児患者がワクチンの接種を受けました。52名の患者はワクチンを受けませんでした。その後にインフルエンザウイルスの感染を受けたか受けなかったかを確認するために、ウイルスの分離試験とウイルスに対する免疫抗体の定量試験を実施して、インフルエンザウイルスに罹ったことを追跡調査しました。感染者を表の中では「感染者の数と割合」として示しました。最初に7歳以下と7歳以上の患者の合計で表を説明すると、85名のワクチン接種者のうち17名(20.0%)がインフルエンザウイルスA香港型の感染を受けたが、52名の未接種者では32名(61.5%)が感染を受けてしまったことを示しています。7歳以下と7歳以上の小児に対する効果は、理由は定かではないが7歳以下は7歳以上に対する効果より低かったようです。

 

 以上の結果は、「インフルエンザのワクチンは効かない」と巷で囁かれているような事実はないことを示しています。

 

 お年寄りとインフルエンザに罹りやすい集団にワクチン接種を早急に開始し、全体としてのワクチン接種率を高める必要があります。

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