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141.在宅介護での感染対策. 5-21-99.

  1. 介護保険制度導入に備える
  2.  新聞やテレビを始めとするマスコでは、来年(2000年)導入される介護保険制度の解説や予測される問題等を毎日毎週のように特集しています。このことは、新しい介護体制の開始に国民全体が関心を寄せている証拠かも知れません。

     介護保険制度の来年からの実働に焦点を合わせて、介護や福祉等の多彩な職種の参入が予測されます。これをビジネスのチャンスにしようとする新たな時代背景から、私のところにも質問や相談のメールが多く届くようになりました。私は、介護や福祉のことは全くの素人で解りませんし、また感染看護については専門でありませんので、質問や相談の多くには役に立つ情報を提供することはあまり出来ません。しかし、「在宅介護で問題となる微生物による感染に対する予防法、および在宅ケアを支援する団体や介護用具の取り扱う企業等からの介護用具の消毒法等」についての相談が圧倒的に多いのが現状です。そこで、寄せられる質問や相談に答えることを目的に、在宅介護の問題点と感染対策について考えてみたいと思います。

     

  3. 要介護者の保有する細菌
  4.  在宅介護で感染が問題となるのは介護を受ける人、即ち要介護者のみではありません。介護者と要介護者の両方が注意をしなければならないと思います。何らかの理由から特別老人養護施設などに長期滞在していた老人や病院に入院していた患者が在宅介護に移行する時は、その人が保菌者てあることを念頭におく必要があります。というのは、患者が帰宅する際医療施設などから保菌情報を提供されていない場合が多いからです。

     実際は、入院治療から在宅医療に移る際、保菌している菌と細菌が定着している部位を具体的に把握していることが望ましいのです。その主な理由は、介護者が要介護者の保菌部位を具体的に把握していると、要介護者の感染拡大、例えば陰部から呼吸器などへの新たな感染を防げること、介護者自身の感染リスクを低めること、また他の在宅要介護者への感染を防ぐことなどができるからです。

     細菌が存在する主な部位は、咽頭、鼻腔、尿道口、股間、褥瘡(トコズレ)や気管切開部などです。これらの部位から分離される主な細菌は、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、薬剤耐性黄色ブドウ球菌、溶血性レンサ球菌や緑膿菌などの日和見感染菌が多いと思われます。危険なのは、こうした部位からの分泌物や排泄物、これらに触れる手指や器材などです。

     

  5. 感染源への対策
  6.  在宅医療を支援する医療関係者が自らを感染から予防し、感染源を拡大させないための要点は次のように考えられます。

     その1.排泄物と汚物の処理汚物または汚物で汚れた物品を一時的に保管する場合、その汚物室の床や汚物を入れる容器の周囲は菌数が特に多い場所となります。また糞便をはじめ排泄物や汚物は大量の感染源を含んでいますので、取り扱いは特に注意を要します。生理用ナプキンやオシメなどて、焼却可能な物品は汚物を密閉した後焼却に出しましょう。一般にはあまり注意されませんが、糞便やトコズレ部に薬剤耐性黄色ブドウ球菌が検出される場合は、シーツなどの寝具にも多くの菌が付着していますから、シーツの交換などはホコリを飛び散らかさないよう丁寧に静かに行うことが菌の飛散と感染源の拡散を防ぐ有効な手段となります。

     その2.介護者の手指や室内履オシメの交換や洗濯で介護者の手指が汚染される場合が極めて多いと思われます。消毒薬や薬用石鹸などを使い、さらに大量な水道水で良く洗い流す心がけが必要となります。室内履の底には多くの菌が付着していますから、室内履きを介して菌を持ち運ぶ可能性があります。そのため室内履はできるだけ洗濯できるものを使うのが良いと思われます。洗面所のセッケンやタオル並びに扉の取っ手や水道のコックは、緑膿菌などの伝播中継点となり易いので注意を要します。全て良く洗う必要があります。

     その3.室内環境の清潔保持人工呼吸器や尿バックは細菌の汚染を受けやすく、結果的には保菌量はきわめて多いことがしばしばあります。室内環境を清潔にするには、要介護者の全身を拭き清め、陰部を洗浄し、下着を含めた寝巻きや寝具を出きるだけこまめに交換と洗濯することが大切です。

     

  7. 介護用具の洗濯

 要介護者の口腔鼻腔および陰部などの粘膜や皮膚に細菌が多く付着していますから、細菌学的な検査をしないと正確には解りませんが、介護に用いる用具も細菌で汚染されていると考えるべきでしょう。特に要介護者のマットレスパット敷き布団掛け布団毛布の上掛けは、意外に細菌汚染のひどい物品です。これらは、普通洗濯が出来ない物が多いのですが、近頃は丸洗いできる商品を購入することもできますし、場合によってはリースで借りることもできます。地域によっては、用具のリースと同時に洗濯も引き受けてくれる業者もあります。洗濯が出来ない場合は、日光消毒をするよう心がけて頂きたいと思います。上に記載した室内履もできるだけ洗濯機で洗濯をすると清潔になります。その場合、漂白用のブリーチを加えると消毒効果が高くなります。要介護者が使う物品は、洗濯ができるか、水で丸洗いできる物を選ぶことが賢明と思います。 

 介護用具や寝具類を取り扱う業者の方には、用具類の運搬に使う車両や運搬容器には注意を払って貰いたいと思います。例えば、搬入する物品と搬出する物品を同じ容器または車両の同じ場所に一緒に置かないことです。車両は、清潔品と汚染品を入れる荷台を完全に仕切り、ホコリや空気も混じらないように工夫することが賢明と思われます。更に、物品を搬入した同じ素手で汚染品を搬出すると、玉石混合となり、更には車両全体も汚染されると考えるべきでしょう。清潔な手袋の使用と汚染手袋の区別、手洗いと消毒の励行などが基本的に守られると良いと思います。

丸洗いできる寝具については、「優良認定」に掲載してあります。興味のある方は、そちらを参考までにご覧ください。

 

 健康な皮膚から検出される病原性細菌の数はわずかです。しかし、要介護者の握りしめたままの手は、尿道口と同じ位に細菌が多いようです。その要介護者の手から介護者の手に細菌が受け渡され、感染が広がる可能性があります。手指を清潔にしましょう。

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