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148. 性行為感染症. 7-4-99.

  1. STDとは何ですか。 

 リン病や梅毒などを少し前までは性病と呼んでいました。性病いう言葉は、生殖器に病変がある場合に用いられていたようですが、現在は用いられなくなりました。また性病予防法という法律もつい最近なくなりました。近頃STDについての質問が目立ちはじめまたよな気がしますので、STDについての簡単な説明をしたいと思います。

  性交をはじめいろいろな性的接触によって感染する病気を広い意味で性行為感染症と一括して呼びます。英語でSexually transmitted diseaseと書くことから、その頭文字をとって便宜的にSTDと略称されることも多々あります。正式には、性感染症と書きます。一次期は性行為感染症とも書いていましたが、「行為」の二文字は削除されたようです。STDには、ウイルス、細菌、クラミジア、真菌、原虫、寄生虫によって起こされる病気が含まれます。

A コンドームを使ったのに性病になった。

 寄せられた質問の中に「国外に滞在していたとき性的接触をもったが、コンドームを使っていたのに性病に罹っていると診断された」というブラックジョークのようなものもありました。

性感染症は、生殖器や陰部に限って起こる病気ではありません。陰部に病巣がみられる場合も見られないケースもあります。広い意味の性感染症は、局所感染と全身感染の2種類に分けられます。その一つは、肉眼的な病変を限局した局所に起こす感染症、例えば、陰部ヘルペス、尖圭コンジローム、陰部伝染性軟ゆう腫(軟らかいイボ)、リン病、軟性下疳や毛ジラミ症などです。もう一つは、ウイルス性肝炎、エイズ、伝染性単核症などのように局所には病変を示さず全身に感染が広がるものです。下の表に性感染症をまとめて示しました。

世界的にクラミジアによる非淋菌性尿道炎やヘルペスウイルスによる陰部ヘルペスが若い人達の間に大流行しているようです。単純ヘルペスウイルスには、顔面の多くの部位に病変を好んで起こす口唇型(1型)と陰部の各部に好んで病変を起こす陰部型(2型)がありますが、口唇などから陰部型単純ヘルペスウイルスが検出されることも珍しくはないようです。地域によっては婦人科を訪ねる患者の80%近くがクラミジア陽性であるとの報告もあり、また米国の女性新兵を調べたところ約10%にクラミジアの感染者がいたとの報告もあります。

性行為の多様性と若年化により、本来は陰部に病変を起こす陰部型単純ヘルペスウイルスが口唇などに感染することも珍しくないようです。性感染症を持つ人達の多くは、静脈から麻薬を注射する行為の常習者も多く、また不特定多数の性的パートナーをもっていることも多いようです。

 さて、上に紹介した「コンドームを使ったのに性病と診断された」との表現は少し甘く、「コンドームを使ったのに性感染症または性行為感染症と診断された」の方が正確であります。この情報を提供してくれた方「カイテル将軍(私が付けたあだ名です)」は、冗談が好きなのだと思われます。私の推測では、お医者さんに性行為感染症と言われてマサカととてもビックリしたので、それをジョーク的に他人にお披露目しているのだと思います。落語ではありませんが落ちが付いています。その性病とは陰毛にシラミが集り痒くてたまらい「毛ジラミ症」でした。珍しくはないようです。

性感染症の厄介なことは、感染部位が陰部であることが多いため、医師を含めた他人に見てもらうのに抵抗があること、炎症や潰瘍の病巣は原因病原体が多く存在することなどがあるため、性行為により益々感染が拡大する恐れがあることです。更にもう一つ、衛生状態が改善されると感染症は少なくなります。しかし、衛生状態がいかに整備されても、性教育や道徳教育がいかに施されても、性感染症が減少するとは限りません。

性感染症(原因病原体)

ウイルスによる感染症

陰部ヘルペス(単純ヘルペスウイルス)、尖圭コンジローム(乳頭腫

ウイルス)、陰部伝染性軟属腫(伝染性軟属腫ウイルス)、ウイルス

性肝炎(B型やC型の肝炎ウイルス)、エイズ(ヒト後天性免疫不全

ウイルス)、サイトメガロウイルス感染症(サイトメガロウイルス)

伝染性単核症(EBウイルス)

クラミジアによる感染症

非淋菌性尿道炎(クラミジア)、*鼠径リンパ肉芽腫(クラミジア・

トラコマチィス)

細菌による感染症

  • 淋病(リン菌)、*梅毒(トレポネーマ・パリーダ)、*軟性下疳(

性下疳菌)

真菌による感染症

膣カンジダ症(カンジタ)

原虫による感染症

膣トリコモナス症(トリコモナス)、アメーバ赤痢(赤痢アメーバ)

寄生虫による病

毛ジラミ症(毛シラミ)

*印は、旧伝染病予防法の対象となる病気

最後に一言、教育の難しさを示す話を披露します。ある発展途上国で、エイズの蔓延を食い止めるために、性教育や産児制限などの啓蒙活動を全国津々浦々まで展開していたときの話です。コンドームを適当な太さの棒にかぶせて避妊と感染防止の説明をした。その教育を受けた人も説明者と同じように近くにあった棒の先にコンドームをつけて、自分はコンドームとは無関係に実行しました。

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