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219. 木酢は美容と健康に好い? 11-10-2000.

1.質問を貰いました。

少し気にかかる事がありますので質問します。ご承知の様に、最近の健康ブームや自然志向ブームに乗って木酢もかなりの人気のようです。しかし、本当に木酢は身体に安全なのでしょうか。古来より使われていたと言うのが売込みのようですが、まだ、安全かどうかのデータはどこにもありません。多分誰も調べていないのではないかと思います。

では、何故この様な疑問を持ったか、背景から説明します。まず、歴史的に、産業革命当時、英国では、コールタールやアスファルトをテームズ川に捨てたため、テームズ川が全滅してしまいました。そこで、頭のいい人が、これらを陸地に捨てる事を考えました。この捨て場が道路の舗装です。

ご存知と思いますが、アスファルトは原油精製の残さコールタールは石炭の熱分解生成物です(ですから、原油の輸入が続く限り道路工事もなくなりません)。どちらも複雑な化合物の集まりで、特定の物質ではありません。更に、一般に有機物の熱分解物がタールです。従って、タバコにタールが含まれているのは当然の事ですね。

そこで、木酢の製法を見てみると、炭を作る時に生じた煙を冷やしたものだとの記述があります。そうだとすると、当然タールを含んでいる事になります。事実、園芸店で木酢液をみると、素人目にもタールが溶け込んでいるとの印象を受けます。

最近では、木酢を風呂に入れると美容と健康によいとかの話しも聞きます。これで本当にいいのでしょうか。タバコの二の舞にならねばいいと思います。と言う事で、もし、多少なりとも分かりましたら、教えて頂けると幸いです。(以上原文のまま)

2.調べてみました。

タールについて私が教わって記憶している知識に次ぎのようなものがあります。日本の誇れる学術業績の一つに、山極博士(東京大学教授)のタールによるガンの誘発実験があります。山極先生は、ウサギの耳にタールを繰り返し塗布して、ガンを作らせることに成功しました。これが今日の化学発ガンの原点と思います。

ヨーロッパの家々には、各家庭の屋根の一番高いところにみな煙突があります。石炭を燃料に使っていた当時は、「大きなブラシで煙突のスス払い」を職業にする人達がいました。このスス払の人達の職業病として、皮膚ガンがありました。またパイプタバコを好む人達には、舌にガンが多発していたようです。

タバコや石炭の煙に含まれるタールが皮膚ガンや舌ガンを誘発するのではとの考えのもとに、ウサギの耳にタールを塗りつける実験を山極先生が始めたのだと教えられたように記憶しています。

木酢をインターネトで調べてみますと、多くのサイトが現われてきます。殆どが販売を目的とするHPですが、なかには「木酢の作り方や一般的に多い質問に対する答え」を載せているHPもあります。

幾つかのHPに掲載されている比較的良心的と思われる内容を纏めると、おおよそ次ぎのようになります。木酢は、まず木炭を作る際に生じる煙を冷し、その水滴を採取したものです。赤黄褐色の液体で、特有の燻臭があります。この液体をカメに入れたまま半年以上静置すると、軽油質、木酢液とタール分の三層に分離するようです。一番上に浮いている軽油質と底にたまったタール分を取り除いた透明度のある水溶液を木酢液と呼んでいるようです。木酢液の蒸留を二三回繰り返した液は、木酢精留液と呼ばれ医薬品や食品製造などに使われているようです。しかし、木酢液は、農作物に使われ、酢酸、フェノール類、アルコールなど、200種類以上の成分が含まれているようです。常識的には木炭を作るナラ材などを使うようですが、近頃は建築廃材等を使って作った木酢液および粗悪な輸入品もあるようです。

木酢液は、園芸用として土に使うと植物の生育に好いと書いてあります。この作用は、木酢液の成分が土のなかに存在する微生物を殺すのか判りません、または逆に土壌中の微生物を活性化するのかはHPの文章からは判りませんでした。しかし、木酢液は、「園芸用であって、飲んだり肌に触れないようにしてください」との但し書きを掲載しているHPもありました。木酢精留液の成分や毒性などを記載したHPは見つかりませんでした。

HPから読み取れることは、木酢液とは、木質の熱による乾留物で、タールを除いたとは書いてありますが、タールを一部含む水溶液のようです。炭焼きの工程から得れるので、昔から使われているのでしょう。しかし、昔から使われていたがために、逆に新たに成分や毒性などは調べられていないのかも知れません。

古くからの伝統的な製法では、半年以上も寝かせてタール分を分離して木酢液ができるようです。木酢ブームに乗ってにわかに大量に市場が必要としても、「伝統的な木酢液は」はそう簡単に大量生産はできない筈です。店頭に並べられている新園芸用商品としての木酢液の一部は、別な大量生産法で作られているのかも知れません。「木酢液」そのものは昔からあるものでも、「製造法や素材」は違う可能性があり、含まれる成分も多少は違うかも知れません。

 

ここに紹介したような内容だけでは、質問を寄せられた方は「まだ要領を得ません、よく判りません」と云うでしょう。木酢液の製造や販売に携わっている方々、また木酢液の愛好家や研究家などの人達の皆さん、「木酢液」についてもう少し科学的な情報をお寄せ下さいませんでしょうか。お願いします。

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