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361. ワクチンと刺身は同じか. 6-9-2004.
 
人は数値に弱い
359. インフルエンザワクチンの大量回収によせて」を読ませて頂きました。読んだ感想として、「人は数値に弱い」と言うのを地で行っていると思います。
 
恐らく、医療関係者が金儲けのためにワクチンを溜め込んでいると言うのはあり得ないでしょう。在庫管理ができていないのと、人に対する思いやりや優しさが足りない方が多いのだと思います。
 
今回の問題点は、人は数値を盲目的に信用したり、絶対的なものとして考えてしまう事にあります。教育上の問題と言えばそれまでですが、「数値はただの数、それに意味を持たせるのは人間」との思想が全く欠落しています。つまり、数値を解釈するのはあくまでも人間です。
 
例えば、家電品の故障率と原発の故障率を比較しても全く意味が無いでしょう。故障率が共に0.5%とした場合、200回使えば1回故障するというのは、家電品では許されても原発では許されません。飛行機の墜落率を0.5%としたらどうでしょう。200回飛ぶと1回は墜落と言うのでは乗る人はいないでしょう。
 
この様に対象とするものによって、数値の解釈、特に大きいか小さいかの判断は変動します。当然ですが、医療品は高度な信頼性が要求されるため、刺身の返品率とは比較になりません。更に、インフルエンザは感染拡大するため、ワクチンを受けられなかった事により、インフルエンザから肺炎を併発して本人は死亡し、その周囲の人にまでインフルエンザを移してしまう事もあり得ます。しかし、ワクチンを受けていたため軽く済みこの様な悲劇に見
舞われなかったとしたら。そう考えてくると、損失をこうむったのは、刺身では店だけでしょうが、ワクチンの場合は製造業者から、不特定な人まで広範囲に及ぶと考えられます。全く比較にならないと思いますがいかがでしょうか。
 
なお、今回の問題は、上に述べた事だけでは収まりません。もっと深いところに根があります。何らかの調査や実験を行なう場合、その調査や実験を行なう人は、予想や結果に対する期待、あるいは作業仮説、理論から導かれる結果を元にしてそれを実証するために行ないます。平たく言えば自分に都合のいい結果を出すようにしている訳です。これはまた捏造と紙一重だとも言えます。例え、本人が意識していなくとも、自分に都合のいい結果をのみを
取り捏造してしまう事もあります。これを防ぐには、追試や調査・実験過程を精査して判定する必要がありますが、大概の人はそこまで考えていませんので、結果として出てきた数値を鵜呑みにしてしまう傾向があります。
 
ワクチンの返品率と刺身の返品率を比較した人にどの様な意図があったかは解りませんが、ワクチンの返品率を小さく見せかけ妥当な線に収めようとしていた事だけは確かです。                     終
 
平均値のマジック  
刺身とワクチンの返品率は同じ」を読んで考えました。私は、仕事として抗菌効果を調べている会社人間です。殺菌効果や抗菌効果の強さを一般の人に表示する場合によくパーセントを使います。例えば、ある溶液に細菌を一晩混合しておく方法で殺菌力を求めるとします、生き残った細菌が最初に存在した数の100分の1にまで減少していた場合、生きった細菌数は1%で99%が殺菌されたことになります。殺菌力は「99%」と表示すると、限りなく100%に近いから完全な殺菌力があり、生き残る細菌数はほとんどゼロに近いと錯覚することがあります。
 
「99%」という表現では内容を正確には理解できないことが多いのです。例えば、100のうち99が消えたと考えれば残りは1でゼロに近いように感じるかもしれない。ところが最初に存在した菌数が100万であったとすれば99万は消えたかも知れないが、生き残ったのは1万もある。100個で感染が成立する場合は、1万も残っていると100人が感染する菌数が残っていることになる。殺菌剤としては、あまり有効ではない。
 
パーセントでの表示は、素人の人を錯覚させるには有効な手段となる。ワクチンの返品率を0.5%と表現することがそもそも作為的で、その結果刺身と同じでワクチンの返品率を0.5%は立派なものだから、余計なことを言うなとはケシカランと思いました。0.5%のワクチンが返品されたと言う代わりに10万本のワクチンが無駄になったと表現すべきと思う。
                
 
 
「インフルエンザワクチンの大量回収」については色々な意見を頂きました。「数値の大きさが同じであると経済学では刺身もワクチンも同じ扱いになるのだろうか」との疑問を送ってきてくれた人が一番多かったようです。平均値が同じでも対象物によって意味は違うと教えてくれたメールもありました。そのなかの二人の方からのメールを紹介しました。結果として、刺身とワクチンは同じく扱ってはいけないことを教えられました。

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