383. 赤ワインで前立腺癌リスク低下. 1-17-2005.
米国ワシントン大学公衆衛生学のスタンフォード教授らは、1日1杯の赤ワインを摂取することで、前立腺癌のリスクを半減できるとする新知見を国際腫瘍学雑誌に発表しました(International Journal of Cancer 113: 133 ? 140, 2004)。
1日1杯の赤ワイン
1週間に4オンス(約118.4ml)のグラス4杯の赤ワイン(473.6ml)を摂取している男性では、前立腺癌のリスクが最大で60%減少した。臨床的に悪性度の高いガンほどリスクの減少効果は大きかった。ビールやアルコール度数の高い酒を飲んでも好影響も悪影響もともに変化はなく、白ワインでは一貫したリスク減少効果がないことが確認された。この効果は、赤ブドウの外果皮に豊富に含まれる抗酸化物質の一種であるリスベラトロールによると考えている。
リスベラトロールは、ガンの進行に重要なさまざまな生化学的経路に影響を与えることが実験により示唆されているのだそうです。例えば、1) 抗酸化薬として、発がん性のある危険なフリーラジカルを対外に排除する、2) 強力な抗炎症因子として、腫瘍進行を促進する特定の酵素の働きを阻害する、3) 細胞増殖を抑制することで細胞分裂の回数を減少させる、4) 細胞の死アポトーシスを促進する、5) 前立腺癌の成長を促進するテストステロンなどの男性ホルモンの血中濃度を低下させる、などの作用です。いいこと尽くめのように感じられます。
飲みすぎは逆効果
スタンフォード教授らは、今回の研究は小規模(検体数などの記載はない)であるが、赤ワインとリスベラトロールの有効性が示されたことは大変に興味がある事柄です。これまでの多くの研究は、アルコール飲料全体の前立腺癌リスクへの影響を調べており、ワインとビール、ワインとアルコール度数の高い酒とで影響を比較したものは少なかった。赤ワインの摂取量が適量を超えると、全体的な発癌リスクの増大から事故による負傷などの社会問題まで、過剰摂取による危険を考えると、1週間に4オンスのグラスで4杯(473.6ml)から8杯(947.2ml)という適量の赤ワインの接種で恩恵が得られることを示唆している、と述べている。
赤ブドウの外果皮にリスベラトロールにいう抗酸化物質の一種が多く含まれていることを私は知りませんでした。更に、このリスベラトロールの作用が驚くほどに多彩であることです。夢のクスリとでも呼べるのと違いましょうか。別な研究機関ではリスベラトロールをマウスに投与して前立腺癌の発生や悪性度を減らせるかを検討するそうです。よいことはどんどん進めてもらいたいものです。しかし、何らかの理由から赤ワインに限らすアルコール飲料を受け付けない人達の男性は、前立腺癌に対してどのように防御策をこうずれはよいのでしょう。