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424. 長寿の秘訣. 1-5-2006.
 
日本人の平均寿命
 50歳を超えていた平均寿命が40歳弱になってしまった国々がアフリカに出現してきました。平均寿命が短縮した最大の原因は、生殖年齢層のエイズによる死です。その結果、アフリカの一部の国では生殖年齢を過ぎたお年寄りと子供の多い社会となりつつあります。生殖年齢層の極端な減少は、国家と民族の存亡にかかわる忌々しき現象です。
 ところがアフリカの国とは異なりわが国では、百歳を超えるお年寄りが全国に一万人を数える世界でも珍しい長寿大国となりました。それにしても1900年代の日本人の平均寿命は、40歳代であったようです。その後戦争が何回もあり生活の厳しい時代もありましたが、100年の時間が経過して2000年代になると、なんと日本人の平均寿命は40歳代から80歳代へと驚くほど飛躍的に伸びました。国民全体の平均寿命が100年間で40歳も伸びたのです。別な表現では、完全に成熟した老齢化社会を形作っています。今後もこのままの状況が続くと仮定すると、今から100年後の2100年には日本人の平均寿命は、なんと120歳になっているのかもしれません。不老長寿の秘訣はなんであるのでしょうか。
 
老化を抑制するホルモン
 親の性質が子供に伝わる不思議な現象を遺伝と呼びます。「どうして親の性質が子供に遺伝するのかと聞けば、遺伝だから仕方がない」と答えていたのは、つい数十年前までのことでした。その頃の遺伝についての考えは、超自然的で不可思議な現象で、科学の手が届かない神秘な世界を意味していました。ところが遺伝は遺伝子により、遺伝子は核酸から出来ていることが分かってしまい、「遺伝=核酸」と物質化してしまいました。物質化されると遺伝現象も実験のまな板に載せることが出来るようになりました。言葉とか意識などは、まだ物質となっていませんから、実験科学の対象物とはならないのです。
 「老化」も科学の言葉で語られる時代となってきました。米国テキサス大学の黒尾誠博士らは、老化を抑制して寿命を延長するホルモンとしてクロソKlothoタンパクを見つけ出すのに成功しました。詳細は米国の科学雑誌サイエンス(Science 309:1829-1833, 2005)に掲載されています。脳血管障害、認知症や骨粗しょう症などの成人病のリスクファクターは老化で、この老化をクロソタンパクで抑制できれば単に寿命の延長にとどまらず、医療への応用が可能となります。
 クロソタンパクの血液中の濃度が計測できるようになると、治療への応用がはじまるかも知れません。百年前にパストゥール研究所にいたロシア人科学者のメチニコフは、老化は食中毒によると考え、ヨーグルトを定期的に多飲すると老化防止に良いと人々に宣伝しました。
 長生きするだけが幸せとは限らす、健康に長く生きられることが不老長寿なのだと思います。曖昧模瑚の「287. 不老長寿の遺伝子は存在する」には、長寿の人たちに特有な遺伝子が存在するらしいとのことを紹介しました。この文を掲載して三年ほどの時間が経過しました。その間にエネルギー代謝が寿命を左右している可能性が示唆されるようになりました。
 
 最初に紹介したように百年前の国民の平均寿命は40歳代、それから百年の時間が経過したら平均寿命は40歳延長し80歳代となりました。平均寿命の延長は、クロソタンパクのみならず、色々な要因が複雑に絡み合っての結果なのだと思われます。しかし、クロソタンパクが老化による成人病を抑制できれば、平均寿命は確実に延長することでしょう。百年後の2100年には日本人の平均寿命は120歳代となっているのでしょうか。

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