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458. 歯周病菌の心疾患や糖尿病との関係. 12-28-2006.
キーワード:歯周病菌 嫌気性グラム陰性桿菌 糖尿病 心疾患 抗菌薬
 
[歯周病の微生物]
歯周炎(俗にいう歯槽膿漏)はActinobacillus actinomycetemcomitans, Porhyromonas gingivalis, Prevotella intermedia, Treponema denticolaなどの嫌気性グラム陰性桿菌によって引き起こされ、さらにこれらの微生物の一部は動脈硬化の病巣で認められ、動脈に侵入が可能であることが認められています。糖尿病患者は、歯周病に罹る頻度か高いリスクがありまた。その理由は、糖化最終産物が原因となって、歯肉下で病原性グラム陰性桿菌の微小細菌叢が形成されるからと考えられています。

[歯周病菌と心疾患]
ドイツのウルム大学の歯周病学のAxel Spahr博士らは、冠動脈性心疾患と歯周病に関する研究から、歯周病細菌の役割と歯周病原細菌数が歯周感染と冠動脈心疾患とに関連があると内科学雑誌に発表しました(Arch. Internal Med. 166: 554-559, 2006)。
今回の研究は、症例対象研究で、43〜73才の臨床的に安定している冠動脈心疾患(CHD)の患者263例を用いて行なわれました。この263例の全例に少なくても一か所の管腔径50%以上の狭窄(細くなること)が認められました。マッチさせた対照例526例には心疾患歴はありませんでした。
歯周ポケット内のActinobacillus actinomycetemcomitansとPrevotella intermediaの菌数とCHD発症との間には統計学的に有意な関連性が認められました。一方、他の歯周病菌とCHDとの関連性は全く認められなかった。抜け落ちた歯の数とCHDとの関連も認められました。完全喪失では8%にCHDが認められ、対照群では2%のみであったようです。
抜歯や歯周治療のような歯科処置後の菌血症については、口腔内病原菌またはその関連産物が血流中への侵入が可能であることは、これまでに充分に実証されていることなので、慢性歯周炎により歯周病原菌に全身が繰り返し暴露されることが推定できるとAxel Spahr博士らは論文のなかで述べています。
 
[糖尿病患者と歯周病]
ドイツ・デュッセルドルフの歯科共同診療所のG.-Georg Zafiropoulos博士らは、糖尿病患者では歯周病の罹患率が高く、それによって糖尿病の代謝状態がさらに悪化し、その場合歯周ポケットを機械的に清掃するだけでは不十分で、抗菌薬を投与して血糖値の改善をうながす必要があると発表しました(MT8-31-2006)。
Zafiropoulos博士らによると、歯周の管理が不十分な糖尿病患者では重度の歯周病に罹りやすくなる。その原因は、歯肉下で病原性グラム陰性桿菌のポケットが形成され、潰瘍化したポケットの上皮から体内に侵入する。これで患者の結合組織や歯槽骨の破壊もうながされ、歯周病が悪化し同時に血糖値の調節も困難となるようです。
歯周病がある糖尿病患者に対して機械的な治療のみを行なった研究では、歯周の状態は改善されたが、血糖値に対する効果は認められなかった。それに対して、機械的治療に加えて抗菌薬の投与を併用すると、ほとんどの糖尿病患者で血糖値が改善されました。この治療の実施は、糖尿病のコントロールが不十分な患者に対してきわめて有効であると述べています。
 
 
歯周病は、これまであまり深刻に取り上げられていなかった傾向があるように思います。歯が浮いてきたり、動き出したり、歯みがきのときに出血したりして、初めて歯科クリニツクを訪れて治療してもらうことが多いかと思われます。しかしながらそれではとき既に遅く、治療してもらっても何本かの歯は抜け落ちてしまいます。歯が抜けて初めの生歯のありがたさが理解できるようです。歯周炎の場合、歯の喪失にとどまらず、体内に侵入した病原菌やその関連物資により、糖尿病の状態は悪化し、冠動脈心疾患の発症頻度が高くなるようです。歯のみならず歯肉も大切にしましょう。435. 口腔内の細菌が全身病の原因.6-20-2006.も興味ある方は開いて見てください。

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