461. オリーブオイルと発癌. 3-26-2007.
キーワード:オリーブオイル DNAの損傷防止 発癌リスクの低下
デンマーク・コペンハーゲン王立病院臨床薬理学のHenrik E. Poulsen博士は、オリーブオイルと発癌との関係の調査研究の結果を発表しました(FASEB Journal 21:45-52,2007)。
「北欧の人たちの発癌リスクが南欧の人々より有意に高いことは、南欧の人たちの食事にオリーブオイルの使用量が多いことで説明できる可能性があり」、「地中海食ではオリーブオイルの消費量が多いことから、遺伝子であるDNAが酸化されて損傷をうけることを保護しているので、結果として発癌率を低下させていることが示唆されている」とPoulsen博士が報告しました。そこでPoulsen博士は、この可能性を検証するための試験を実施しました。デンマークとフィンランドの北欧、中欧のドイツ、イタリアとスペインの南欧などの各地の施設において、男性182例を対象にして、DNAとRNAの酸化による損傷に対するオリーブオイルとその成分の効果について比較試験を実施しました。
発癌リスクの試験は、細胞がガン化するには、なんらかの刺激によって細胞が損傷を受け、遺伝子が酸化されてできる癌の前駆物質であるグアニン(G)の酸化副生成物が尿中にでてきますので、この理論にもとづき、グアニンの酸化副生成物の尿中濃度を測定することによって実施しました。
被験者の男性182例は、三週間の試験期間中、異なる量のフェノールをふくむオリーブオイルを毎日25ミリリットル摂取しました。フェノールは、茶、野菜、赤ワイン、チョコレートなどの食物にふくまれ、核酸の酸化によって受ける損傷を軽減することが知られています。
試験開始時点での北欧人の尿中グアニン酸化副生成物の濃度は、南中欧の人々の濃度より有意に高値を示していました。三週間の試験が終了した時の尿中グアニン酸化生成物が北欧群で13%低下しました。オリーブオイルに添加したフェノールの含まれる量によらず、DNAが酸化されて生成する濃度に差は認められませんでした。
このことから、オリーブオイルの摂取が有益で、DNAの保護作用はフェノール以外のオリーブオイル成分であることが示唆され、オリーブオイルは健康食品であると述べています。
オリーブオイルの輸入量と国内での消費量は、年々増加しているようです。健康によいと言われることが増加の遠因としてあるのでしょう。今回ここに紹介しました論文に使われている発癌を証明する試験は、理論的にはかなり難しく、詳細に説明するのは控えました。ビタミンE=肝油は、活性酸素を中和する作用が認められているとは聞いたことがあると思います。植物油のオリーブオイルと動物脂の肝油とは、同じではありませんが、作用としては似ているものと思われます。フランス人は肉好きで日本人にはタバコを吸う人が多いにもかかわらず、子供のころからワインを飲むフランス人と緑茶を飲む日本人には動脈硬化が少ないのです。この現象は、ブドウや茶に含まれるポリフェノールの効果でないかと考えられています。すこし古い記事ですが「44.赤ワインと緑茶の効用 6-15-97.」に出ていますので、興味のある方は参考にしてください。
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