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510. 肺炎球菌ワクチンの効果. 11-12-2008.
キーワード:肺炎球菌、ワクチン、感染抑制
 
1.繰返す小児の耳感染
米ウェイクフォレスト大学医療センターのKatherine A. Poehling博士らは、肺炎球菌ワクチンの接種が反復を繰り返す乳幼児の耳感染症の患児数を減少させたと発表した(Pediatrics 119: 707-715, 2007)。
耳感染は小児に最も多い感染症の一種で、耳感染の三分の一が肺炎球菌によるものである。この痛みを伴う耳感染の再発に悩む患児とその親には嬉しいニュースである。
Poehling博士らは、1998〜2002年に生まれたニューヨークの患児約2万7千例とテネシーの15万例を調査した。調査の目的は、肺炎球菌ワクチンが耳感染を再発する患児の割合がどのように変化したかを明らかにすることであった。
ワクチン接種を受けた小児の耳感染の再発は、テネシーで16%、ニューヨークで25%も減少した。また小児と成人の肺炎球菌髄(ずい)膜炎などの重度感染症の発生率が減少し、同時に耳感染を繰り返す小児の数も減少していることから、このワクチンは、小児にも成人にも有益であると述べている。
 
2.小児の死亡率
米ニュージャージー医科歯科大学のAnushus Sinha博士らは、発展途上国の肺炎球菌ワクチンの幼児への予防接種は、小児の死亡率を減少させ、同時に費用効果も高いと発表した(Lancet 369: 389-396,2007)。
Sinha博士らは、世界72か国の生後6週、10週と14週の幼児への肺炎球菌ワクチンに関して、予測される便益、費用と費用効果について、決定分析モデルを組立で調査した。
Sinha博士らは、肺炎球菌ワクチンの接種なしでは3〜29か月の幼児が年間380万人死亡すると予測した。ところが72か国のワクチン接種率が100%になると、毎年40万7千人の乳児の死亡を減らすことができると述べている。
 
3.乳児の重症肺感染
ノルウェー国立公衆衛生研究所のMarianne R. Bergsaker上級医務官らは、ワクチン導入後の最初の2年間で、重症肺炎球菌感染症がワクチン導入前に比べた70%減少したと発表した(Vaccine 26: 3277-3281,2008)。Bergsaker上級医務官らは、肺炎球菌ワクチン接種が引き起こした予期せぬ重度の副反応、または回復不能な障害は認められなかったと述べている。
 
 
乳幼児の耳感染は、耐えがたい痛みを伴い、しかも反復して再発を繰り返す特徴がある。この耳感染症は、ほとんどの小児が感染するほど広く蔓延している。それを一回の接種分の費用が5ドルだそうで、日本人にしてはそれほど高価なワクチンではない。このワクチンを2〜3回接種するとほとんどの小児における肺炎球菌による感染を防ぐことができるとの報告を紹介した。

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