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518. BKウイルス腎症の新尿検査法. 2-22-2008.
キーワード:BKウイルス、腎症、迅速正確な新診断法
 
ノースカロライナ大学のHarasharan K. Singh博士らは、腎臓移植後に認められるBKポリオーマウイルスによる腎症を検出できる簡単な新尿検査法を開発したと発表しました(Presence of urinary Haufen accurately predicts polyomavirus nephropathy, J. Am. Soc. Nephrol. 20: 416-427, 2009)。
 
最初に腎臓移植患者から分離されたBKポリオーマウイルスは、健康人の尿からも検出され、通常は非病原性のウイルスと考えられています。腎臓移植を受けた患者など免疫抑制剤での治療を受けている患者などの免疫力の低下している患者では、時に深刻な病態を引き起こすことがあり、多くの場合がBKウイルス腎症です。
 
このBKウイルス腎症は、特異的な治療薬としての抗ウイルス剤および効果的な治療法はいまだ見つかってないことから、できるだけ早期に診断し、腎移植患者などでは免疫抑制剤の使用量の調整を開始することが重要と考えられています。ところが迅速で且つ正確な診断法が存在しない問題があります。
 
今回考案された新診断法は、BKウイルス感染者の腎臓の細胞で増殖し、尿中に出てくるBKウイルスの三次元凝集体(Haufen)を電子顕微鏡で計測するものであり、検査結果が判明するまでに約3時間と短時間であり、費用も約400ドルで済むと云う。
 
BKウイルス腎症の21例から得られた143サンプル中の77サンプルにHaufenが認められ、Haufenの有無は3〜120週にわたる追跡調査の期間中の腎症の経過をよく反映していたと報告されています。
 
一方、BKウイルスによる腎症になっていない対照例139例のサンプルからHaufenは認められなかった。Haufenの検出による診断法(と腎組識検査および尿中ウイルスのPCR法による検出法)の陽性一致率は97%で、陰性一致率は100%であったようです。
 
このHaufen検出法は、尿中のBKポリオーマウイルス性腎症を診断するための患者に痛みをあたえない非侵襲的手段として有用であることを示していると結論しています。
 
この論文では触れられていませんが、BKウイルス感染者で免疫抗体価が高く、その上に何らかの腎障害があると、尿中にBKウイルスはもちろん免疫グロブリンも排出されてきます。このような患者の尿サンプルからBKウイルスの分離率は低くなります。その理由は、ウイルス粒子が既に抗体タンパクと結合して凝集塊を作っているからと考えられています。今回の研究成果である尿サンプル中にHaufenを検出する方法は、考えようによると至極当たり前ですが、これまでに誰もが気がつかなかった事実でした。

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