◆腸炎ビブリオ [Vibrio parahaemolyticus]
1950年シラス中毒事件の際に大阪大学の藤野恒三郎が発見した細菌である。コレラ菌と同じビブリオ属に属するが、菌体はコンマ状に湾曲せず真っ直ぐである。グラム陰性の通性嫌気性桿菌で、海中に生息しており、増殖には3%の塩分が必須である(塩濃度が0.5%以下では増殖できない)。 分離当初は極単毛で、莢膜や芽胞は作らない。海水中の細菌なので、海産物を生で食べる習慣の日本では、特に夏期の食中毒の原因菌である。
腸炎ビブリオによる食中毒は感染型食中毒で、この細菌で汚染された生の海産物を食べると、腸管内でこの菌が増殖し、耐熱性で溶血作用や致死作用をもつ外毒素の溶血毒素が産生される。腸炎ビブリオによる食中毒では、この溶血毒素を産生する株のみが病原性を示す。