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169.生カキとクリプトスプリディウム. 11-22-99.

1.米国での話、生カキからクリプトスポリジディウム.
  大阪での学校給食を介して起きた病原性大腸菌O157による集団食中毒に続いて、埼玉県では水道水を飲んでクリプトスポリジディウムの感染を受けて激しい下痢をともなう集団事故は、まだみなさんの記憶にあると思われます。クリプトスポリジディウムは、大腸菌やサルモネラ菌と違い、塩素などの消毒剤にとてつもなく強い抵抗性を示します。曖昧模糊の24番「クリプトスポリジュウムてなに?」を参考にして下さい。
 
*成牛と違って、子牛はクリプトスポリディウムに感染すると発症します。腸管内で増殖したクリプトスポリジディウムが大量に糞便に排泄されるようです。家畜の糞便や飼育舎からの排水などが河川に混入すると、その場所より下流の河川水はクリプトスポリジディウムに汚染されている可能性があります。河川水にクリプトスポリジディウムが存在すると、その河川水が流れ込む湾岸の海水も汚染されることになります。
  国際学術雑誌「新興感染症」の9-10月号(Vol.5,No.5)の表紙は、「生カキを食べる女性」の油絵で飾られています。偶然でしょうが、その号に「養殖海域の生カキ中にクリプトスポリジディウム」という論文が掲載されています。
  米国メリーランド州天然資源局(Dept. of Natural Resources)が毎年調査している生カキの養殖海域43ヶ所の内から7ヶ所を選んで、クリプトスポリジディウム(Cryptosporidium parvum)が検出されるかを調査しました。1997年の秋、1997年の秋と1998年の冬の3回、毎回10個当てのカキを採取し、各サンプルを蛍光抗体法によるオーサイトの検出、PCR法による遺伝子の検出とマウスの感染試験などを行ったと記載されています。
  試験した7ヶ所の全ての養殖域からのカキからクリプトスポリジディウム(海水1リットル当たり平均32個.信じがたい数値です、註田口)が検出された。21サンプルのうち3サンプルは、マウスでの感染試験も陽性となった。
  
2.生カキ中でのクリプトスポリジディウム.
 この論文とそこに引用されている文献から、次ぎのようなことが紹介できます。海水中でクリプトスポリジディウムは少なくとも2−3ヶ月間は感染力を保持する、実験的に海水に加えたクリプトスポリジディウムはカキを含む二枚貝によって海水から効率的に取り除かれる、カキ体内に取り込まれたクリプトスポリジディウムはマウスでの試験で少なくとも1週間は感染力がある。
 生カキ中のクリプトスポリジディウムは、
72℃以上(時間は不明.註田口)に加熱するか、−20℃の冷凍庫に24時間以上凍結しておくと、感染力はなくなるようです。しかし、−20℃の凍結では死滅しないウイルスなどが存在する。したがって、カキなどの二枚貝は、加熱してから食べることが安全である。
B.根本的なクリプトスポリジディウム対策.
  小型球形ウイルス(SRSV)、A型肝炎ウイルスなど多種類のウイルスやクリプトスポリジディウムがカキを汚染していることは、ほぼ周知の事実になりつつあります。病原体によるカキの汚染は、曖昧模糊の「97.生カキのウイルス汚染の意味151.A型肝炎が大流行する?」にも書きましたように、海水が汚染されていることが原因なのです。汚染されたカキを養殖しているのではなく、養殖しているうちに汚染されてしまうのです。清浄な種カキを国外から輸入して養殖しても、結果は皆同じになるでしょう。
  なぜ汚染されるのかをもう一度考えてみましょう。家庭からの生活排水は、下水処理場に集められ下水処理法の定めにしたがって適切に処理され、塩素などを加えられてから放流されます。河川などに放流される処理水は、大腸菌の数を含めいろいろな規制値をクリアーしていなければなりません。しかし、その規制値には、ウイルスやクリプトスポリジディウムなどは記載されていません。規制されていないことは、放流水にウイルスやクリプトスポリジディウムが含まれているのかいないのかは調べなくて良いことになりますし、例え存在したとしても特に悪いことにならないのが現状です。地域によっては噴水からでもクリプトスポリジディウムに感染することがあるようです。
「137.噴水でクリプトスポリジウムの集団感染」も読んでみてください。
  生活環境にある水の管理は、厚生省、建設省、農水省、環境庁、地方自治体などの責任と権利が複雑に絡んでいます。その複雑さが各々の責任分担を不明瞭にし、近海の湾内で養殖しているカキがウイルスなどの汚染をうけてしまうことになります。
  近頃は、生カキを提供しない割烹やレストランが多くなっているそうです。食中毒を起こすと料理を提供した末端のレストランなどのみが営業停止などの処罰を受けるからです。トカゲのシッポを切っても現状は変わりません。現状を変えるためには、水の管理責任を明確にし、適切な水処理が必要と思います。
  日本国内では生カキによるクリプトスポリジディウムによる集団食中毒が起こらないことを期待したいものです。この期待値は、科学的な根拠がありませんから、あまり自信がありません。自分の健康を守るためにはますます賢い消費者であることが必要のようです。その上で世論が声をあげることでしょう。


酪農学園大学大学院獣医学研究科の西川晃豊先生から「牛などの家畜は、クリプトスポリディウムに感染しますが発症しないようです。しかし、腸管内で増殖するので糞便にはクリプトスポリジディウムが大量に排泄されるようです。が間違いであることを教えて頂きました。これを受けて成牛と違って、子牛はクリプトスポリディウムに感染すると発症します。腸管内で増殖したクリプトスポリジディウムが大量に糞便に排泄されるようです。と訂正しました。ご指摘有難うございました。(H15/12/18)
 

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