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[ついに雪印集団食中毒の原因が判明する]を追加しました。

203.雪印乳業汚染事件の謎を推理する. 7‐92000

1.謎だらけの雪印乳業事件.

雪印乳業の低脂肪乳による集団食中毒事件に関する新聞やテレビなどのマスコミが報道している情報を、正確性には一部問題があるかも知れませんが、私なりに集約すると次のようになります。「一万人を超える被害者が届け出ている、バルブに十円玉くらい大きさの菌塊が見つかった、飲み残し乳からも細菌(黄色ブドウ球菌?)は検出されない、黄色ブドウ球菌の毒素とその遺伝子が検出された」となります。

大阪府の立ち入れ検査では、雪印乳業が証拠を隠滅したかのようにバルブ等も洗浄されてしまったので、黄色ブドウ球菌などの細菌は検出されなかったようです。

私は、食品衛生学に関する知識や技術には詳しくありませんので、乳製品の製造工程などの詳細については良く知りません。しかし、微生物学の一般常識からして、マスコミの情報は理解するのが難しいのです。

例えば、「一万人もの被害者がでた」ということは、全ての商品が均等に汚染されていたと考えられます。仮に、一万人の人達が各人一リットルの低脂肪乳を購入したとすると、それだけで10トン近い量になります。実際には何トンの製品を製造したのか判りませんが、10トン近い量を均等に汚染する菌数は十円玉くらい大きさの菌塊である筈がありません。

次に「低脂肪乳から黄色ブドウ球菌が検出されないで、黄色ブドウ球菌が持っている遺伝子とその産物である毒素(耐熱性のエンテロトキシン)が検出された」ということは、どのように解釈できるのでしょうか。細菌がいなければ遺伝子も存在しない筈で、毒素も検出される可能性はないと思われます。

雪印乳業が証拠や情報を隠蔽しているのか、立ち入り検査をした専門官達がうかつにも証拠を見つけ出せなかったのか、私には判りません。しかし、報道されている情報は、謎だらけで理解しにくいと思います。

2.次ぎのような推理の可能性はないだろうか.

私達は、浄水機の性能試験を実施するために、これまでに検出可能な菌数を含む2トンの菌液を作った経験があります。均等な状態の菌液を2トン作るのでも、私達には結構大変な作業でありました。

数トンの乳製品を均等に汚染させ、菌は姿を消し、存在した足跡として遺伝子とその産物を残せる確かな方法はあるのでしょうか。これが最大の疑問点であり、謎解きの出発点となります。

次のような仮説が成り立つとすると、この事件の原因を見出すことは可能かも知れません。前にも書きましたが、私は食品衛生については全くの素人ですから、間違いがあるかも知れません。もし間違っていましたら、どうぞご指摘を頂きたいと思います。

「低脂肪乳」とは、生牛乳の替わりに脱脂粉乳を使った商品であるとします。生牛乳から脂肪を除いて脱脂粉乳を作る工程で黄色ブドウ球菌が混入し増殖した。脂肪を除いた脱脂乳を加熱して乾燥させ脱脂粉乳を製造した。何度で何分間の加熱かは判りませんが、その加熱処理で黄色ブドウ球菌は殺されて殖えられなくなり、耐熱性の毒素は粉乳中に、遺伝子であるDNAは死んだ細菌体に無傷で残存した。

このような仮説で作られた低脂肪乳には、黄色ブドウ球菌は存在しますが、殖えられない。しかし、殖えない菌は存在しますから、遺伝子は検出可能ですし、耐熱性のエンテロトキシンは無傷で存在します。

この脱脂粉乳は、かなり大量に製造され、良く攪拌されているため、均等に菌体と毒素で汚染されていると考えられます。このような脱脂粉乳で作られた「低脂肪乳」は、生きている黄色ブドウ球菌は検出されないが、全てに毒素が含まれている可能性があると考えられます。

3.問題はこれから?.

  もし脱脂粉乳の製造工程に細菌による汚染があり、毒素で汚染された脱脂粉乳を用いて「低脂肪乳」を製造していると仮定すると、「数トンの乳製品を均等に汚染させ、菌は姿を消し、存在した足跡として遺伝子とその産物を残せる確かな方法」は可能でありましょう。

 更に、もし上の仮説が雪印乳業の製造工場で起こっていると仮定すると、問題は深刻な事態を顕わにする恐ろしさを含んでいます。深刻な問題とは、次ぎのようなことを予測させるからです。その一つとして、黄色ブドウ球菌で汚染された脱脂粉乳には、黄色ブドウ球菌の他に耐熱性の細菌、例えば、セレウス菌にも汚染されている可能性があります。更に深刻な問題として、これらの汚染された脱脂粉乳は、「低脂肪乳」以外の乳製品の原料として使われている可能性です。もし汚染脱脂粉乳を広範囲に使用しているとすると(混入率は違うでしょうが)、雪印乳業の乳製品は危ないことになりそうです。

 乳製品の製造に使われる容器や機器は、毎日洗浄するのが常識と思われます。それを1週間から3週間に一回しか洗浄しなかった原因または理由は、何に起因するのでしょうか。ここでまた私の推理をしてみたいと思います。自動洗浄装置が設備されていなかったのがルーズさを招いた最大の原因でしょうが、もしかすると洗浄排水を浄化する施設も充分でなかったのではないかと危惧するのです。牛乳だけを含む排水は、微生物による処理が結構難しいのかも知れません。使った容器等を毎日自動的に洗浄するには、大阪工場の排水施設の能力は充分でないので、数日に一回の洗浄に決めていたのではないのでしょうか。間違った推測で有ることを期待したいものです。

 雪印乳業の社長は、「低脂肪乳」の利益は大きくないので経営に多大な影響がないかの発言を記者会見で述べていたように記憶しています。しかし、私の推理が万が一に当たってしまうと、雪印乳業の商品は売れるものがなくなってしまうかも知れないのです。

 ここに紹介した私の推理は、遊びのようなもので真実性は低いかも知れません。そのように期待しています。「雪印乳業はかなりひどい会社であるようだ」との印象を全国民に十二分に宣伝してしまった結果は、社長が9月に引責辞任しても償えないかも知れません。さてこの先、この事件はどのような展開をするのでしょう。注目して見守りましょう。



◆8-19-2000◆ついに雪印集団食中毒の原因が判明する。

 昨日のテレビでのニュース番組および本日(平成12年8月19日)の全国紙朝刊の第一面に「雪印乳業の脱脂粉乳からエンテロトキシンが検出された」という報道がありました。この報道を昨晩テレビで聞いた時に私が感じたことは、「黄色ブドウ球菌の産生した耐熱性毒素の混入源は私が推測したようにヤッパリ脱脂粉乳であったかと思うと同時に、脱脂粉乳からエンテロトキシンを検出するのにどうしてこんなに長期間を要するのだろうかとの疑問」でありました。「203.雪印乳業汚染事件の謎を推理する.7‐9‐2000.」の原稿を私が書いたのは7月9日のことです。その数日前に「脱脂粉乳が原因でないのか」と思いをもつようになりました。

 川越保健所の誤診断のこともありましたから、行政サイドは慎重に検査を進め結論をだしたことと推測されます。それにしても、事件が発生してから原因が判るまでにどうしてこんなに長時間を必要とするのでしょうか。毒素の性質にもよりますが、細菌毒素の検出に現在使われている微生物関連の技術は、迅速且つ微量の定量が可能で、検出限界はピコグラム(ナノグラムの千分の一)のレベルに達しています。和歌山のカレー事件の時、保健所の所長が黄色ブドウ球菌による食中毒と誤診断したことが、ヒ素による事件であることを隠蔽した格好になり、迅速な応急処置ができず多くの犠牲者をだしてしまいました。今回の捜査でも、製造工程の配管やその洗浄などに目を奪われて、脱脂粉乳を疑うのが遅れたのではないかと思われます。毒素の検出には、それほど日数を要したとは考えられないからです。

 今回毒素が検出された脱脂粉乳は、25キロ入りが750袋と新聞に記載されていましたから、ワンロットが約1.8トンとなるようです。脂分を取り除いた残渣を乾燥させた脱脂粉乳は、生牛乳の約10%(正確には解りません)に相当すると仮定すると、約18トンの源乳を処理して作られたと推測できます。

 18トンの生牛乳に黄色ブドウ球菌を混入させた結果、脱脂粉乳の1グラムにエンテロトキシンが4ナノグラムも含まれることになったようです。事件が発覚した当時の報道では、飲み残しの低脂肪乳の1クラムから0.4から0.8ナノグラムのエンテロトキシンが検出されています。このことが正しいと仮定すると、「低脂肪乳」とは「脱脂粉乳」を10倍量の水で溶かしたものになります。低脂肪乳として、安い商品を消費者は買わされていたことになります。

 黄色ブドウ球菌が産生する毒素の殺傷力は、体重1キロに対して50ナノクラム(50キロの体重のヒトに換算すると2.5ミリグラム)程度ですから、4ナノグラムのエンテロトキシンを含む脱脂粉乳を1キログラム程度飲まないと死ぬことはなかったのでしょう。

 雪印乳業では、今回の事故を反省して賞味期限の切れた商品は全て廃棄し再使用は行わないと宣言したようです。賞味期限という言葉の本当の意味が判りませんが、商品が劣悪化してないのであれば、賞味期限の切れた商品全て廃棄する必要があるのでしょうか。捨てる習慣を徹底させるよりも、食べ物には細菌を含め狭雑物を混絶対に入させない体制作り、と万が一にも事故が起きたと考えられるときは速やかに周知徹底させる勇気と決断力を培う方が賢明と思います。

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