▲▲  ▼▼

324. SARSのインパクト.8-1-2003.
 
SARSの物語ること
正式には2002年11月1日から統計が取られだした新型肺炎(重症急性呼吸器症候群、SRSAと略称)は、感染者数8,437人と死亡者数 813人を出し2003年7月11日でとりあえず終息した。大変な病気が流行ったものです。
 
WHOのホームページに発表されている数値によると、感染地域は32の国と地域におよび、そのうち10人以上の患者が発生した地域は、カナダ、中国、香港、台湾、ドイツ、フィリピン、シンガポール、アメリカ、ベトナムである。死亡者の発生したのは、カナダ(32人)、中国(343人)、香港(290人)、台湾(81人)、マレーシア(2人)、フィリピン(2人)、シンガポール(31人)、南アフリカ(1人)、タイ(2人)とベトナム(5人)の10地域となった。中国、香港、台湾、シンガポールでSARSが猛威をふるったことが判る。
 
SARSがこれほどまでに問題化した理由として、ある時期まで原因となるウイルスが確認できなかったこと、感染経路が不明であったこと、死亡率が次第に上方修正されたことがあった。北京での患者数が修正されたことに見られるように中国での状況が把握しにくいことも要因となった。一連のSARSをめぐる状況をみると、感染症の流行が国家ないしは社会にいかに大きな影響をあたえるかをあらためて感じさせた。
 
SARSの衝撃のなかで、この冬にはインフルエンザの大流行とSARSの再来を危惧する声もあがった。しかし、SARSをめぐる混乱を眺めていると、百年前のペストの大流行が思い出される。1894年突然に香港で黒死病が爆発的に広がり道路には死者の死骸がそのままに放置されていたようです。北里柴三郎の神業的な努力により、ノミの吸血によってヒトの体内にペスト菌によって起こるペストであることが確認され、原因となるペスト菌が発見された。香港政庁の統計によると、中国人労働者を中心に約2,700人の患者が確認され、その大部分が死亡した。その後香港では、慢性的にペストの流行が続いた。
 
ペストは、香港から上海、天津などの中国沿岸地域、台湾、日本、ハワイ、北米へと東進し、またシンガポール、東南アジアからインド、南アフリカへと広がった。疾病のグロバリゼイションのはじまりであった。
SARSウイルスは突然変異か創作か
コロナウイルスのコロナという名前は、電子顕微鏡で眺めると丸いシルエットの周縁に太陽の「コロナ」のような飾り角、スパイクが放散しているからです。スパイクの飾りは、細胞に感染するときに重要な役割をはたすようです。
 
コロナウイルスは、ヒト以外の動物からも検出されています。動物によって病態はみな違うようです。ニワトリの気管支炎、ブタの脳炎やマウスの肝炎などの原因となるウイルスの性状はよく判っていますが、ヒトのコロナウイルスは、培養することから難しいのであまり性状が判明していません。しかし、SARSウイルスのスパイクを、ニワトリやブタの原因ウイルスと比較した限りでは、意味のある関係は認められなかったようです。
 
ニワトリやブタのコロナウイルスが遺伝的に突然変異を起こしてSARSウイルスが出来上がった可能性は否定できないが、簡単に起こることとではないと思われます。野生のハクビシン白眉芯を食用にする地域がSARSの発生源であるらしいことから、ハクビシンが媒介したように考えられています。野生の動物であるハクビシンではあまり病原性を発揮しない状態で長く生息していたウイルスが、ハクビシンの解体や調理の過程でまたは加熱が不十分なハクビシンの肉を食ったことが原因となって、ヒトの体内で突然と増殖するようになった可能性も否定できないと思います。
 
SARSウイルスは、誰かが作り出した新規なウイルスである可能性は考えられるのであろうか。ほとんどのウイルスの遺伝子の塩基配列が解明され、誰の目にもとまるように既に公にされています。難しさを別にすれば、その塩基の配列からどのようなウイルスも人の力で創造することは原則として可能となったのです。ハクビシンを食用にする地域に突然として現れたSARSウイルスがテロを目的とした創作ウイルスでないことを決定的に否定する証拠はありませんが、創作ウイルスであるとする確たる証拠もないのが現状と思います。しかし、現実に遺伝子配列からポリオウイルスの遺伝子を合成し、それを繋ぎ合わせて増殖力のある核酸を作った科学者もいます。
 
ある研究グループは、野生のネズミを不妊にする目的で、ネズミのウイルスにある特別な遺伝子を組み込ませた。この遺伝子を組換えられたウイルスは、予測をはるかに超えて組換え前のウイルスのワクチンを接種して免疫にしてあるネズミでも増殖し、全てのネズミを殺してしまいました。この研究グループは、遺伝子の組換えは実験前の予想と違って病原性を強くすることが現実に起こりえることを、バイオテロなどの目的に遺伝子の組換えを行わないように警告する目的で、研究成果を公にしました。
 
SARSウイルスが提示した問題。
バイオテロに使われると困る情報を含む論文は、いかに学術的に優れた内容であったとしても、その論文を掲載しないまたは受理しない学術雑誌が今後増えてくる可能性が高くなると思われます。科学は常に「両刃の剣」となる可能性を内在しているのです。例えば、核分裂は物理学者からすると純粋な科学の問題ですが、それを政治的に用いると核爆弾になることもあり得るのです。学問から得られた情報を科学の範囲内にとどめておければ問題はないのですが、それを政治家が使うと別な存在となってしまいます。
 
「生物」とは「なまもの」とも読め、生物をバイオと略称することもあのます。SARSウイルスは、経済的に莫大な損出を国際的に生み出し、政治的にも人権的にも新たな問題を投げかけたように思われます。なまものの関与した事件に対して「なま政治学的分析手法の確立」の必要性をSARSウイルスは人類に提示したように考えられます。
 
水の供給が人工的に行われるようになって都市は発展しましたが、それは病気の感染拡大をある程度防げたことによるものと考えられています。一方、下水道が出来てパリの人口は200万人から250万人に急増し記録があるようです。赤痢やコレラなどの腸管系の病気が広がるのをある程度防止できるようになったからと考えられています。
 
それではSARSの場合は、なにをどうすればよいのでしょうか。きれいな飲み水の供給や汚水の処理施設を完備することではSARSを防ぎきれないでしょう。新たに問題となるのが空気であるからです。密室、大型ビルや飛行機での循環式空調や排気が改めて大問題となる可能性から、新たな都市空間における空調の問題が浮上するでしょう。
 

▲▲  ▼▼



Copyright (C) 2011-2017 by Rikazukikodomonohiroba All Rights Reserved.