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351. 鳥インフルエンザを考える.3-13-2004.
 
今年の冬はインフルエンザが世界的に流行し、場合によってはサーズSARSも流行るのではないかと予測していた感染症の専門家もいたようです。ところが暖冬であったため、ヒトのインフルエンザはそれほどの大流行を起こさなかったようです。
 
ところが誰もが予測もしていなかった鳥インフルエンザの大流行が突如として勃発し、新聞に鳥インフルエンザの記事が掲載されていない日はこの頃はないのかもしれません。山口県の養鶏場に数拾年ぶりに鳥インフルエンザが発生し、次いで24万羽ものニワトリを飼育していた京都の大型養鶏場に飛び火し、鳥インフルエンザがニワトリ、チャボ(少しまえ)、カラスへと感染が広まり、広域化と同時に規模の拡大が起こっています。
 
マスコミの報道によると、チャボのインフルエンザをいち早く届け出た人は、大事故を未然に防ぐのに協力したとして表彰されました。ところが京都の大型養鶏場の会長ご夫妻は謝罪の気持ちを表すためか自らの命を絶ってしまいました。非常に痛ましい結末を迎えています。その上、京都府では大型養鶏場の社長を伝染病の届出を怠ったため感染が拡大したとの理由などで告訴すると言われています。私個人は、今起こっている鳥インフルエンザの事件(?)に直接の係わりはなく、当事者との面識もありません。鳥インフルエンザについてのニュースを見聞きしていると、奇妙に感じることが多くあり、どうしてもオカシク思える事柄があります。事故と無関係な第三者として、鳥インフルエンザのことを少し考えてみたいと思います。
 
これだけ複雑且つ大規模化させたのには、当該者の届出が遅れたこと、自治体間の連携が悪かったこと、更には不正確な情報が多いことなどによると思われます。
 
届出がなぜ遅れたのか。 
近くの外国で鳥インフルエンザが流行り、人の感染死も報道されていたにも係わらず、毎日千羽ものニワトリが死んでいたのにどうして密告者による通報があるまで届出をしなかったのでしょうか。当該者を除いて正確なことは誰にも判りませんが、故意に「遅らせたり隠蔽したり」と作為的な事が行われていたとすると当該者は極悪人であり刑事的に処罰の対象となりましょう。
飼っていたチャボが死んだのをみた飼い主が鳥インフルエンザを疑って早急に届けでたのと、大型養鶏場の経営者が届けでなかったことを一蓮托生に論じることは差し控えるべきと思います。
なぜならば、大型養鶏場の経営者が鳥インフルエンザの疑いを家畜保健衛生所などに届けでると、インフルエンザであることの確認のための検査を受け、万が一にもインフルエンザと判定されると、まだ病気でなく健康そうなニワトリも全て殺処分され、同時に30キロ以内にある養鶏場のタマゴとニワトリは全て移動禁止の処分を受けることになります。即ち、届け出ることは、自社は24万羽ものニワトリの殺処分を受け、更に他の養鶏場は物の移動禁止になることがかなり高い可能性をもって予測されるのです。自社の経済的な被害は全て自己負担となり、他社の経済的心理的な被害にたいしては負担しきれないでしょうから、当該者は届けるべきであることが判明していたとしても、他業者や従業員などへの多大な迷惑に思いをめぐらし、インフルエンザでないことに一抹の望みをかけ、躊躇しているうちに数日間が無為に経過してしまう可能性がうかがえます。もっと簡単に且つ軽い気持ちで届けられるようにするには、経済的被害を補償する仕組みが必要と思います。
 
自治体間の連携が悪かったのはどうしてか。
ファクスで届いていた情報を確認していなかった、これはお粗末な話で、送信した方は送ったことを知らせてなく、受ける方はファクスやメールの確認をする責任感の欠如を示唆しています。それよりも重要な事柄は、このような感染症が大流行する可能性を誰もが予測もしていなかったことです。行政サイドには、危機管理の実態とその意識が全く存在してないのだと思います。インフルエンザウイルスでなく炭疽菌やエボラウイルスなどの生物兵器およびサリンやVXガスなどの化学兵器が使われていたとしたらどのような事態になっていたのでしょう、身の毛がよだつような恐怖心を覚えます。
 
不正確な情報が多い理由。
私個人は、インフルエンザに限らず動物の病気については一般人と同じ程度の知識と経験しか持っていません。そのためあまり詳しいことは判りません。とりあえず専門でないことを最初に書き添えます。
 
野鳥はインフルエンザウイルスを持っているようですが、それは人間が大腸菌のような細菌を腸管内に保有しているのと似た状況なのだそうです。カモ、アヒルとニワトリなどは、高病原性インフルエンザウイルスによるインフルエンザで死亡することもあるようです。しかし、カラス、ハトやスズメなどの野鳥は、インフルエンザウイルスに対する感受性は高くないようで、感染死したとの報告はないようです。この高い死亡率を示す高病原性インフルエンザを獣医学では家禽ペストと呼び、そのウイルスを家禽ペストウイルスと言うようです。通常のインフルエンザと区別しているのです。インフルエンザは呼吸器系の病気ですが、家禽ペストは全身性の病気です。そのため腸管の細胞でも増殖して糞便と一緒に排泄されるのです。そのため糞便が付着した羽毛からもインフルエンザウイルスが検出されているのです。鶏肉やタマゴにもウイルスが付着している確率は低くても絶対にあり得ないとまでは言えないと思います。しかし、鳥のインフルエンザウイルスは、かなり大量に吸い込まない限りヒトが感染し発症することはないと考えられています。
 
インフルエンザおよびインフルエンザウイルスを研究している専門家は、それほど少数とは思えません。しかし、動物のインフルエンザおよびそのウイルスの専門家はそれほど多くないと思われます。その上カラスがインフルエンザウイルスに罹ったとの報告はこれまでに無いものと思います。しかし、カラスは、ニワトリの糞を食べることがあるのかもしれません。結局のところ鳥のインフルエンザは、まだ良く判っていないことが多いのが現状なので、推測を加えた情報がいきおい多くなるのだと思います。
 
追伸
この原稿を書き上げた後の3月16日に、政府は鳥インフルエンザ対策閣僚会議で「緊急総合対策」を決定したとの報道がなされ、その骨子と解説文が新聞にも掲載されていました。新聞紙面には、「早期発見へ罰則強化」の文字が大きく目立つように書かれていました。罰則を強化しただけでは問題は解決しないと思いつつ、記事を読み進んでいくと、「通報義務違反への罰則強化移動制限命令に協力した養鶏農家への助成措置を行う」とも書いてありました。しかし、病気が発生した養鶏農家への助成措置という言葉はみつかりませんでした。これでよいのでしょうか。

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