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381. 糞便中のピロリ菌の検査. 12-2-2004.
 
ヘリコバクター・ピロリ(正式名称はHelicobacter pylori、ここではピロリ菌と略称します)は、胃炎と胃潰瘍の患者から分離され、尿素を分解するウレアーゼと呼ばれる強力な酵素を持つ病原細菌です。強力なウレアーゼ活性を持つために、強酸性状態の胃の粘膜で、尿素を分解してアンモニアを作り、局所的にpHを中性に保ちながら増殖しているようです。ピロリ菌の感染経路は、よく解っていませんが、水系感染を主体とした経口感染でないかと考えられています。
ピロリ菌は、胃炎、胃潰瘍や胃ガンの原因体と考えられています。そのためビロリ菌が胃に感染していることが判明すると、複数の抗生物質を服用して、除菌治療を受けることが多いと思います。1回の除菌治療で85%程度の人は除菌に成功するようです。
さてピロリ菌の感染を受けているか、除菌に成功したのかなどを判定するには、色々な検査が行なわれます。例えば、培養して菌の有無を調べる培養法、小さな胃粘膜片を取り出してウレアーゼ活性を検出するウレアーゼ試験、アンモニアを検出する尿素呼気試験などがあります。これらの試験は、各々特徴がありますが、それが逆に欠点になることもあります。例えば、試験結果が得られるまでに数日の時間が必要な培養法、胃から粘膜片を取り出すためにはファイバースコープを挿入して組織片を取り出すウレアーゼ試験などです。尿素呼気試験は、痛みも苦痛もありませんが、小さなお子さんには不向きな点があります。
欧米では数年前から糞便を用いてピロリ菌を調べる便中ピロリ菌抗原測定法が開発され、広く一般に用いられていました。日本国内ではこの検査法が診断法として認定されていませんでしたので、健康保険の適用を受けられないでいました。ところが平成15年2月にピロリ菌感染の診断と治療のガイドラインが改定され、便中ピロリ菌抗原測定法が診断法の一つに加えられ、平成15年11月に保険適用となりました。
この便中ピロリ菌抗原測定法は、少量の糞便だけで検査ができますから、特に小児の検査にも便利に用いることができます。偽反応がでる確率は低く感度と特異性に優れています。そのうえ、迅速に結果が得られる特徴もあります。但し、除菌した直後には保留という結果が出やすいことがあるようです。除菌治療後はしばらく時間をあけて再度試験をすることが薦められているようです。
 
これまで医療の現場では、診断を確実にするため、複雑怪奇な新型機器を用いる最先端医療の検査、特異性や感度は優れていても夕食から朝食までなにも飲食してはならない検査、患者に痛みをはじめ苦痛を与える検査などにシバシバ遭遇した経験があるかと思います。一つの例として、胃カメラと呼ばれる非常に優れた機器があります。一昔前までのこの機器は、多少太くて硬くてまっすぐな構造をしていました。これを胃まで挿入するのですから、患者さんにそれなりの協力と忍耐をお願いしていました。現在の胃カメラは細くて柔軟な素材から作られていますし、また麻酔薬の進歩もかさなり、眠っているうちに検査は終わっていることもあるようです。これからの医療の方向性の一つに、患者に与える苦痛を軽減するまたは苦痛を与えない検査や治療があります。段々と取り入れられてきているようです。レジオネラ菌の検査について「379. 尿中のレジオネラ菌の検査」にも記したたように、便中ピロリ菌抗原測定法も患者に与える苦痛はかなり排除されたと思います。

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