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52.黄熱.7−14−97.



  デング熱ウイルスや日本脳炎ウイルスと近いウイルスに黄熱ウイルがあります。黄熱ウイルによる病気黄熱は、デング熱と同じく「ネッタイシマカ」によって媒介される病気です。黄熱は、激烈なウイルス病の代表で、野口英世がこの黄病の研究途中で犠牲になったことは有名な話です。  

 1898年、アメリカはスペインと戦争をしました。当時キューバを占領したアメリカ軍は、スペイン兵の弾で死ぬよりも黄熱で死ぬ兵隊の数が多かったと言われています。そこで米国陸軍は、ウォルター・リード陸軍軍医大佐を長とする委員会にこの病気の原因究明を命じました。  

 ウォルター・リード大佐は、黄熱が赤痢などのような伝染病と少し違うことに気がつきました。ある湖の周囲に患者が多く出る事や地元の長老の意見などから、ある実験の実施を計画しました。それは蚊に刺されるボランティアーを募り、ボランティアーに病毒を持った蚊をたからせて、蚊に刺されると感染するかを確認する人体実験を実施するものでした。その実験は、有償のボランティアーを使ったとはいえ、黄熱で命を落とした犠牲者を大勢出しました。結果として、黄熱がウイルス性の病気であること、また「ネッタイシマカ」が黄熱を媒介することが判りました。  

 ウォルター・リード大佐は、黄熱の原因追求と予防法に関する功績が認められて、米国陸軍はウォルター・リードの名前を永く記念するために米陸軍病院にウォルター・リードの名前をつけました。現在も彼の名がついて存在します。リード大佐は、どのような気持ちで人体実験を行ったのでしよう。赤痢菌の発見者である志賀潔先生は、人道上許されざる行為と非難しています。  

 この辺の事情は、このホームページの「北里柴三郎博士の秘話」の中にある志賀潔先生による「細菌学をつくったひとびと」でウォルター・リードの名のもとに記載されています。この志賀先生の「細菌学をつくったひとびと」を連載しますので、興味のある方はぜひ読んで下さい。病気の原因究明の裏には、どれだけの犠牲が存在しているのかが良く解ると思います。科学の発達には、時として犠牲が伴うもののようです。尊い命を提供して犠牲になつた方々の愛の精神があったから、現在の我々の健康的な生活があるのです。ウォルター・リードを非難するのは誰にでも出来るたやすいことです。あなたが彼の立場であったら、どのように振る舞い、どうしたでしょう。命令にそむいて逃げ出したでしようか。



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