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126. バイオ農薬による健康傷害. 1-4-99.

  • バイオ農薬としてのセパシア菌.
  •  Burkholderia cepacia (以下セパシア菌と略す)は、除草剤や殺虫剤の成分で一般には難分解性である塩化フェニール酢酸も分解するそうです。またある種のカビの生育によるマメやキュウリなどの枯葉病を抑制し、農作物を病害から守る働きを示します。そのため、欧米の農業生産者の間でセパシア菌が農産物の成長促進菌として注目されてきました。

    セパシア菌を使うと、自然には分解されることのない抗菌薬剤、除草剤や殺虫剤を使うよりは地球環境に優しく、また農業への応用は経済的にも莫大な利益をもたらすと考えられるようになって来ました。より優秀な性質のセパシア菌を探索し、または変異菌株を作り、特許の申請が盛んに行われているそうです。

     

  • 病原菌としてのセパチア菌.
  •   Burkholderia cepacia は、米国コーネル大学のウオルター・バーコルダー Walter Burkholder によりタマネギの「ツルツル病」から分離され、マタネギを腐敗させる病原菌であります。

     農業の現場から発見されたBurkholderia cepacia 菌は、そもそも医療の現場ではPseudomonas cepacia 菌として扱われていました。Pseudomonas属には多数の菌種が含まれますが、その中でもセパシア菌は、他菌種と多少性状が違いますので、Pseudomonas 属からBurkholderia 属に分類が変わりました。セパシア菌は、この20年間さまざまな感染症の原因として注目されています。特に最近では、院内感染の原因菌として、また生命維持装置などに使われる管の類などを介した敗血症などを引き起こし問題となっています。Pseudomonas cepacia 菌は、土壌や湿った場所に生息する細菌で、厳しい環境にも適応し、多くの抗生物質に抵抗性なのです。この菌による病気は、抗生物質でも治しにくいので医療の現場では厄介ものです。

     ところが、セパシア菌が農業の現場で多用されるようになると、ヒトがこの菌に暴露される機会が多くなるはずです。そうすると感染者が多発する可能性が危惧されます。農産物への本菌の大量散布を実施にする前に、自然生態系で適切に管理できる体制作りが是非とも必要と思われます。

     自然界でなにか新しいことを行うとき、「開発・発展か環境・生態」かと選択を迫られることをしばしば見聞きしてきました。セパシア菌の場合は、「経済と健康」の選択肢となりましょう。ヒトの健康や生命に勝る発展などは存在しないはずです。しかし、セパシア菌の使用を抑制して難分解性の化学物質の使用を推奨することも矛盾します。

     農業と医学の微生物学者が問題解決に努力する以外に安全への近道はないでしょう。

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