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247. ブルセラ菌とは.6-18-2001.

川崎市の動物園でヘラジカの出産に関係した人達が病気になった、検査の結果ヘラジカから感染した「ブルセラ症」であるらしい、とのニュースが新聞やテレビで報道されました。そのニュースを聞いた方から「ブルセラ症」とはどんな病気なのでしょうか、との質問のメールを貰いました。ブルセラ症の原因となるブルセラ菌について簡単な説明を記載します。

ブルセラ菌による感染症をブルセラ症と呼びます。ブルセラ菌は、本来ヒツジやヤギ等の動物に感染する病気を起こす細菌ですが、人間にも感染しますので人畜共通感染症の重要な病原細菌の一種です。ブルセラ菌とは、1887年にイギリスの軍医ディビット・ブルースがマルタ熱の患者からはじめて分離した細菌です。このブルースの貢献を永遠に残すために彼の名前Bruceのスペルにellaを付けブルセラBrucellaとなりました。これは、赤痢菌を発見した志賀潔の志賀Shigaにellaを付けて赤痢菌をShigellaと書くのと同じ発想です。

ブルセラ菌は、人間ではマルタ熱(または波状熱)の菌(ブルセラ・メリテンシスBrucella melitensisと呼ぶ、以下ここではブルセラ菌と書きます)、ウシの流産菌、ブタの流産菌等が知られています。元来ブルセラ菌は、家畜に病気を起こしますが、ヒトにも感染します。羊や山羊のミルク、その他に接触したヒトが感染しますが、屠殺場などでの感染が多いようです。アメリカの国立公園でバイソンやヘラジカ等の野生動物に感染があり問題となっているようです。

この細菌は、球状に近い小さな桿菌で、増殖に酸素を必要とする好気性で、グラム染色をすると陰性に染まり、芽胞は作りませんが、細胞の中に入って生き長らえる特徴があります。潜伏期は非常に長い、急性の場合でも感染後1〜2週間後に発症、特徴のある発熱とリンパ、脾臓や肝臓の腫れが診られます。感染は、消化器または呼吸器の粘膜から起こります。

この細菌は、家畜の病気、主に流産を起こすので獣医学では重要な病原性細菌の一つです。その上、動物との接触のあるヒトにも感染するので、普通の微生物学の専門家でも特別な許可がない限りこのブルセラ菌は取り扱えない規則が作られています。尚、野兎病菌や百日咳菌などがブルセラ菌と似ている細菌として知られています。

ブルセラ菌の発見者であるブルース個人についてもっと知りたい方は、私のHPの表紙にある「北里柴三郎の秘話」をクリックし、「志賀潔の細菌学を創った人々」を開くと「18.ディビット・ブルース」に説明があります。志賀潔先生は、マルタ熱の研究(ブルセラ菌)までは記載していませんが、興味ある方は読んでみてください。

アメリカではイエローストーン国立公園などのような広大な生態系を維持している場所で、いまヘラジカ等野生動物のブルセラ菌が問題となっているようです。HPを見ると限りヘラジカは、どうしてかこのブルセラ菌に感染しやすいようですが、しかし発症して死ぬことは余り無いようです。ただ他の健康な動物に菌を伝播させるので困っているようです。自然生態系でのできことが川崎の動物園で起こったようです。それでも多くの感染者がでないうちに診断がついて不幸中の幸いと思っています。

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