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446. 肺炎球菌ワクチンで肺炎による死亡が減少. 10-6-2006.
キーワード:肺炎球菌ワクチン 肺炎 入院期間短縮
 
肺炎球菌
肺炎球菌は、2個が連結した形態をとることから、一昔前までは肺炎双球菌と呼ばれていました、今現在の正式な名称は肺炎レンサ球菌となっています。
中学生の生物学の教科書に肺炎双球菌が遺伝子とのかかわりの説明にでてきます。肺炎双球菌は、菌体表層に莢膜と呼ばれる粘液質の膜状構造物があります。莢膜を持っている菌はマウスを殺す毒力がありますが、突然変異で莢膜を欠損している菌はいかに大量を接種してもマウスを殺すことはありません。莢膜を持っている菌から莢膜の遺伝子DNAを取り出して莢膜のない菌に挿入すると、莢膜のなかった菌に莢膜が作られるようになり、その上マウスを殺す強毒株に変異するのです。
この大発見は、「北里柴三郎博士の秘話」のなかに掲載されています「微生物学での大発見50傑 」の22番の1928年と29番の1944年のところで遺伝とDNAの関係としてあげられています。
肺炎球菌は、健康な人の鼻腔や咽頭にも生息している病原細菌ですが、通常は無害であることが多い。肺炎球菌単独でも肺炎や菌血症を引き起こしますが、高齢者や免疫能の低下している患者などでは重篤な肺炎を起こすこともあります。またインフルエンザの患者の一部では、インフルエンザウイルスと肺炎球菌との混合感染で致死的な肺炎を起こすことがあります。
 
肺炎球菌ワクチン
肺炎球菌のワクチンを接種すると、肺炎による死亡や合併症が起こるリスクが低くなるとの成績がプリンストン大学のDavid Fishmen博士らにより
発表されています(Clinical Infectious Diseases 42:1093-1101, 2006)。その概略を紹介します。
米国のペンシルベニア、テキサスとニュージャージーの3州で1999年から2003年に肺炎で入院した約6万3千例の記録を解析しました。6万3千例のうち12%(7,560例)は入院前にワクチン接種を受けていたが、23%(14,490例)は未接種で、残りの大部分(40,950例)はワクチン接種の有無は不明でした。
ワクチン接種群は、入院中の死亡リスクが未接種群または不明群と比較して40%から70%も減少しました。また呼吸不全や腎不全、心筋梗塞などの合併症発生のリスクも有意に低く、さらに入院期間も未摂取群と比較して平均で2日間も短縮された。
米国疾病管理センターCDCでは、65歳以上の高齢者や特定の健康上の問題を抱えている若者に対して、肺炎球菌ワクチンの接種を推奨しています。今回の結果にもとづけば、年間数千万ドルの医療費を節約でき、数千人の命を救えると推定しています。
 
 
米国には「Healthy People2010」計画があり、2010年までに高齢者の90%にワクチンを接種することを目標にしているようです。Healthy People2010の肺炎球菌ワクチン接種目標は、達成できそうで、達成されると肺炎球菌による致死的な感染例は減少することが期待されています。日本国内には、また肺炎球菌ワクチンはありませんが、高齢者のインフルエンザ対策の一環としても肺炎球菌ワクチンの用意が望まれます。

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