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515. レジオネラ菌による環境汚染. 2-10-2009.
キーワード:レジオネラ属菌、レジオネラ症、環境汚染
 
レジオネラ属菌
1976年にアメリカのフィラデルフィア市のホテルで在郷軍人(legionnaire)の集まりがあった。その時に、空調用の冷却水の中で繁殖していた(後で判明)細菌が、細かい粒子となって空気中に浮遊し、それを吸引した在郷軍人の高齢者に肺炎様の病気が集団発生し、参加していた高齢者を中心に多数の死者が出た。
 
このことから病気は最初は「在郷軍人病」と呼ばれ、のちに「レジオネラ肺炎」と決まった。菌名にLegionella(在郷軍人)pneumophila(フィラデルフィアで肺炎様の症状)という名前が付けられました。
 
日本では、この細菌による院内感染で1996年に都内の大学病院に入院していた幼児の2名が亡くなった事が報告されたが、日本各地の空調の冷却水からもLegionella pneumophilaが分離されている。
 
レジオネラ属菌は、水中や湿った土壌中などの環境中に広く分布しているブドウ糖非発酵のグラム陰性の好気性桿菌で細胞寄生性であることが特徴である。酸に耐性で、熱に対しては60℃では30分では生き残るが32分では殺菌される。
 
表 レジオネラ症患者報告数
報 告 年 総 数 男 性 女 性
  1999*    56     42     14
  2000   154    125     29
  2001    86     78      8
  2002   167    139     28
  2003   147    127     20
  2004   160    151      9
  2005   281    252     29
  2006   518    452     66
  2007   668    527    141
  2008**   686    529    157
*:4〜12月、 **:1〜9月 2008年10月現在
 
繁殖しやすい環境
水中や湿った土壌中などの環境中に広く分布している細菌で、20〜50℃で繁殖し、36℃前後(人肌)で最もよく繁殖する。また空調施設の冷却塔水、循環式浴槽水、給湯器の水などの人工水中に生息する捕食性原虫類(アメーバ−)の細胞内で大量に増殖する。
 
レジオネラ属菌は、細胞内寄生性の細菌で生体に侵入後、マクロファージや白血球などの食細胞に貪食されるが、殺菌されることなく増殖する。
 
高齢者、新生児および免疫能が低下している人や患者などが罹り易い。レジオネラ肺炎に特有な症状やX線像はないので、症状のみから他の肺炎との鑑別は難しい。四肢の脱力、意識障害などの神経・筋肉症状、急速に全身症状が悪化する例もある。死亡率は約15%である。エリスロマイシンやリファンピシンが有効、肺炎の進行が速いので適切な治療が必要である。
 
家庭などでの注意点
この細菌は他の細菌に比べて高温環境に強く、24時間風呂では高濃度に生存している。この菌はどの種類でもヒトに病気を起こすので、24時間風呂、循環風呂や強制的に空気を送り込む装置ジャクジーなどを利用している人は、風呂水や水泡を口に入れたり鼻から吸い込んだりしないように気を付けることが大切である。浴槽のヌメリを洗浄するときは、マスクの着用が勧められる。
 
感染・検出事例
大型客船の入浴設備、フィトネスクラブのジャクジー、超音波加湿器、高圧洗浄水で足湯施設の洗浄者、ごみ焼却場の冷却装置の整備者、自家製腐葉土などの感染・検出事例がある。
 
珍しい事例として、長時間車を運転しているバスやトラックの運転手に体調不良に感じている者が多いそうだ。そこで、廃車された車のカーエアコンのフィルター付近を調査したら、22台のエアコンのうち11台のエバポレーターのヌメリでレジオネラ菌が検出された(11/22例=36%)。
 
そこでカーエアコンが汚染される原因を知るために、雨が降るといつも水が溜まるアスファルト道路上の水たまりの水を無作為に採取して調べたところ、意外にも全サンプルの36%(16/45例=36%)からレジオネラ菌が検出された。
 
水しぶきをあげながら水たまりを往来することで、しぶきを含む空気を車のエアコンが吸い込み、レジオネラ菌を含む冷却された水滴がエバポレーターに溜まる。エバホレーターのあとにはフィルターなどの装置は付いていない。自分の車からレジオネラ菌の感染をうけることも可能性がありそうです。
 
これまでにレジオネラ菌と密接に関係する話題をいくつか紹介してきました。そのなかで「336. 豪華客船とレジオネラ菌319. 浴槽からレジオネラ菌が飛散する399. レジオネラ菌と生活水汚染」などは、興味ある話題かと思います。興味と時間のある方は、是非共にお読みください。

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