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552. ニトログリセリンで前立腺ガン治療
キーワード:前立腺ガン、ニトログリセリン、PSA倍加時間、一酸化窒素
 
バクイーンズ大学泌尿器科のD. Robert Siemens助教授が率いる研究チームは、前立腺ガンの治療にきわめて少量のニトログリセリンを用いたところ、副作用なしにガンの進行が遅延または停止したと発表した(Phase II Study of Nitric Oxide Donor for Men With Increasing Prostate-specific Antigen Level After Surgery or Radiotherapy for Prostate Cancer.Urology 74(4): 878 - 883, 2009)。
 
全米で毎年23万5千例、カナダ全土で2万7千例が前立腺ガンと確定診断されている。また根治的前立腺摘出術、放射線治療または両方の処置を受けた患者の推定30〜50%が再発する。
 
ここに報告する内容は、前立腺ガンの治療に初めてニトログリセリンを用いたもので、24ヶ月間にわたる第U相試験の結果である。対象は、前立腺ガンの手術または放射線治療の後で、ガン進行の主要な予測因子であるPSA値が上昇した男性29例とした。
 
少用量の除法性の経皮用ニトログリセリンパッチを用いてPSA値をモニターしたところ、24ヶ月間の試験を完了した17例中16例で安定または低下した。PSA値倍加時間から算出したガン進行速度が未処置の対照群で12.8ヶ月であったのに対して処置前は13.3 ヶ月であり、処置群では31.8ヶ月であった。
 
Siemens助教授は、少用量のニトログリセリンによる一酸化窒素(NO)療法の効果を再度確認し、応用にこぎつけるために、臨床試験を幅広く展開する予定と述べている。
 
尚、ニトログリセリンは、これまでに1世紀以上にわたり狭心症の治療にきわめて高用量で投与されてきた。今回の試験は、一酸化窒素の減少がガン進行に重要な役割を果たしており、少用量のニトログリセリンによりガンの進行を抑制できる可能性があることを示唆している。
 
ニトログリセリンは、血管拡張作用があるので狭心症の薬として使われている。体内で加水分解されて生じる硝酸が、さらに還元されて一酸化窒素 (NO) になり、細胞内のCa濃度が低下するため血管平滑筋が弛緩し、血管拡張を起こさせることが判明している。きわめて少用量の除放性の経皮用ニトログリセリンパッチを用いるとある種の前立腺ガン患者のPSA値が安定したり低下したりすることが今回の試験で確認されたと云う。前立腺ガンの患者にとっては朗報である。
 

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