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557. グルコサミンとコンドロイチンで関節痛は緩和せず
キーワード:グルコサミン、コンドロイチン、関節痛、軽減効果無
 
スイス・ベルン大学のPeter Jüni教授らは、関節痛を軽減するために世界中で数百万人が服用しているグルコサミンとコンドロイチンの2種類のサプリメントに関節痛からくる痛みを改善する効果がないとの研究結果を発表した(Effects of glucosamine, chondroitin, or placebo in patients with osteoarthritis of hip or knee: network meta-analysis. Peter Jüni et al. BMJ 341: 4675, 2010) 。
 
グルコサミンとコンドロイチンは、膝や腰に発症する慢性疾患である変形性関節炎患者に生じる痛みを緩和するために併用または単独で使用されている。変形性関節炎の治療では主に鎮痛薬と抗炎症薬が使われるが、これらは胃や心臓に影響を及ぼすことがある(特に長期間使用すると)。そのため痛みを軽減するだけでなく、病態の進行を遅らせる治療薬が望まれている。
 
この10年間、一般医またはリウマチ専門医によるグルコサミンとコンドロイチンの処方は増加し続け、グルコサミンサプリメントの世界での売り上げは、2002年と比べ2008年には約60%増加し、その売上金額は約2000億円に達していると推測されている。しかし、グルコサミンとコンドロイチンの有効性を検討した試験では、一貫した結果は得られておらず、実際の効果を判定するにはそれらを大規模に再検討する必要があった。
 
Jüni教授らは、今回膝または腰の変形性関節炎患者を対象にグルコサミンとコンドロイチンの単剤あるいはこの両剤の効果を検討したランダム化試験(3803例)を実施し、その結果について分析した。プラセボ比較試験だけでなく、両剤を直接比較した試験も含めた。また主要疼痛強度は、関節腔の幅とした。経過観察は、3, 6, 9, 12, 15, 18および 21か月間とした。得られた数値から信頼限界と標準誤差を算出し比較した。
 
その結果、グルコサミンとコンドロイチンの単独使用および併用のいずれにおいても、関節痛の強度や関節腔の矮小化に意味のある変化は認められなかった。それにもかかわらず、一部の患者ではこれらのサプリメントに効果があったと感じていたようだ。
 
同教授らは、これらのサプリメント自体に害はないことから「患者がこれらのサプリメントの服用を続けたとしても、当人が効果を信じて自費で賄う限り害は認められない」と述べつつも、グルコサミンとコンドロイチンは、単独または併用のいずれの場合でもプラセボと比べて関節痛を軽減せず、関節腔の矮小化においても改善は認められなかった。新たにこれらのサプリメントを使用しようとする患者に対しては、使用しないよう指導すべきである」と述べている。
 
 
ここに紹介した研究成果は、審査制度が確立されているBritish Medical Journalに掲載されたものであることから、信頼できるものと考えるべきである。細かな数値は紹介しなかったが、得られた数値は信頼限界と標準誤差を算出したが、グルコサミンとコンドロイチンは、単独または併用のいずれの場合でもプラセボと比べて全ての数値が重なり合っていて有意な差が認められなかった。グルコサミンに腰痛を軽減する効果が認められないとの報告は、曖昧模糊(551.経口グルコサミンの腰痛軽減への効果なし)に紹介してある。いずれにしてもサプリメントは、宣伝文のような効果は認められないが、しかし服用者の一部には効いていると感じているのは確かであるようだ。病は気からということわざがあるように、効果のない(効かない)サプリメントも痛みがとれたと思う人は、引き続き服用するも良いのかもしれない。

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