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562. 1型糖尿病患者はエンテロウイルスの感染率が高い
キーワード:1型糖尿病、エンテロウイルス感染、インスリン不足
 
1型糖尿病の原因としてエンテロウイルス感染が関与していることを示す成績がオーストラリアのニュー・サウス・ウエールス大学のWilliam D Rawlinson教授らの研究グループにより発表された(Enterovirus infection and type 1 diabetes mellitus: systematic review and meta-analysis of observational molecular studies BMJ. 2011; 342: d35)。
 
糖尿病には、1型糖尿病と2型糖尿病があり、生活習慣の影響による糖尿病は2型糖尿病と呼ばれ、それに対し1型は自己免疫性疾患であるため、両者は全く異なる病気である。
 
1型糖尿病は、血糖値を下げるインスリンを分泌している膵臓にあるβ細胞が何らかの原因により死滅する病気で、β細胞が破壊されるとインスリンの分泌が極度に低下するか、ほとんど分泌されなくなる。そのため以前は「インスリン依存型糖尿病」とも呼ばれていた。
 
エンテロウイルス感染と1型糖尿病との関係は40年以上も前から研究されてきたが、一貫した結果は得られていない。Rawlinson教授らの研究グループは、2010年5月までに報告された論文を検索し、1型糖尿病または膵島に対する自己免疫反応陽性の1型糖尿病前症の患者の血液、便、組織中のエンテロウイルスのRNAまたはウイルス粒子タンパクを測定した研究を対象に解析を行った。
 
登録基準を満たした研究は、26件であった。いずれも症例対照研究で、症例1,931例とコントロール2,517例の計4,448例が含まれている。
 
得られた成績の分析結果、コントロール群と比べ1型糖尿病または1型糖尿病前症と診断された患者のエンテロウイルス感染率は、それぞれ9.8倍、3.7倍と高く、エンテロウイルス感染と1型糖尿病との有意な関係が示唆された。
 
Rawlinson教授らの研究グループは、エンテロウイルス感染と1型糖尿病との因果関係を明らかにする大規模な研究の必要性を指摘している。
 
 
エンテロウイルスの感染によりインスリンを分泌する膵臓のβ細胞が破壊されたとまでは触れられていないが、エンテロウイルス感染と1型糖尿病との有意な関係が示唆されたと報告している。これからエンテロウイルスによる感染と1型糖尿病との因果関係は大規模な研究を実施することで明らかになるのかは不明である。きわめて普遍的に存在するエンテロウイルスの感染が1型糖尿病を引き起こす引き金になる可能性については魅力を感じるが、エンテロウイルスの感染が1型糖尿病の原因となるのであると1型糖尿病患者はもっと多くても不思議でないような気もする。いずれにしても今後の研究の成果を待ちたい。

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